リモート勤務の孤独に対処する3つのステップ
Illustration by Mary Haasdyk Vooys
サマリー:リモートワークで孤独を感じていないだろうか。本稿では孤独に対処する3つのステップを紹介する。それは、自分のニーズを見極め、選択肢を評価し社会とのつながりを探し、行動するというものだ。自己観察と心身の健... もっと見る康に着眼することの重要性、ならびに健康とウェルビーイングの価値を改めて指摘する。 閉じる

孤独への対処法

 初めて仕事がリモートに切り替わった時は、本当に嬉しかったものだ。長年、車で通勤していたが、週12時間は渋滞に巻き込まれ、とてつもないストレスとイライラを味わっていた。在宅勤務になると、通勤時間がなくなっただけでなく、周囲の会話や視線を気にすることなく(職場のレイアウトは見渡しのいいオープンオフィスだった)、仕事に集中できるようになった。

 ところが時間が経つにつれて、孤独を感じるようになった。仕事に集中できるようになったけれど、同僚との交流は、オンライン会議かメールだけになった。いつのまにか仕事への熱意が低下し、自分の殻にこもるようになった。人とのつながりを切実に求めて、SNSに膨大な時間を費やすようになった。私はゆっくりと、着実に、孤立していった。

 孤独とは、自分が求める社会的つながりと、実際の人間関係の量や質との間にギャップがある時に抱く苦痛や不快感だ。それが大きいか小さいかは、その人の性分やニーズによって個人差がある。しかし、すでにコロナ禍の前から、孤独感を抱く人が増えていることは報告されていた。米医療保険大手シグナの2020年の調査によると、調査対象者の61%が孤独を感じていると答えた。

 そこで、孤独感に苛まれている人に向けて、それに対処するための第一歩を紹介しよう。

自分のニーズを見極める

 まず、その孤独感が自分にとって何を意味するのか考えてみよう。孤独の解釈や感じ方は、人によって驚くほど違う。自分が何を必要としているかを理解することが決定的に重要になる。

 仕事で人とつながっていて、自分が活躍していると感じるためには何が必要か考えてみよう。どのような交流や関わり方なら楽しいと思えるか。軽いおしゃべりか、一対一のミーティングか、グループでの談話か。ランチの仲間を探しているのか。さらに大きなチームで仕事をしたいのか。

 私の場合、自分のニーズをよく考えてみると、かつての職場環境が恋しいわけではなく、仲間とつながりを維持し、毎週のように新しい人と出会う機会を切実に求めていることがわかった。自分のニーズを考える時は、詳細まで考えよう。たとえば誰かとランチをしたいなら、週に2回なのか、月に1回でよいのか。

 具体的な自分のニーズがわかると、それがすぐに解決できるのか、それとも大きな変化が必要なものかを把握しやすくなる。

選択肢を評価する

 自分の生活に何が欠けているかわかったら、自分が望むレベルの社会とのつながりや交流に近づく選択肢を考えよう。ここは、好奇心を起点にするとよい。次のような質問を自分に繰り返し投げかけてみよう。

・すでにあるもののうち、活用できていないものは何か。
・自分のニーズに合わせて調整できることは何か。
・さらに探りたいリソースや機会はあるか。

 問いへの答えは、一つではなく複数考えてみよう。ブレインストーミングのように、選択肢をリストアップするとよい。近所のコワーキングスペースを探す、ボランティア活動を探す、会社の既存のネットワーク(従業員リソースグループなど)を調べる、習い事を始める、専門家団体に加入して活動する、などさまざまな案があるはずだ。

 私の場合はまず、仕事の時間がフレックスであるため、ユニークな機会が存在することに気がついた。そしてアイデアを絞り込んだ結果、マイノリティの女性プロフェッショナルが集まるグループをオンラインで立ち上げることにした。同じ目標を持つ少人数のグループは、それまで知らなかった人たちとつながりをつくると同時に、同じように孤立感を抱いている人たちを助ける機会になった。

一歩踏み出す

 自分のニーズのリストを見直して、最も重要と感じられるものに丸をつける。次に、「選択肢を評価する」でリストアップした選択肢を見て、一番重要なニーズに応える選択肢を見つけて、調べて、最初の一歩を踏み出そう。

 たとえば、誰かとコラボレーションをしたいなら、あなたのスキルを学びたい後輩のメンターになれないか、上司に相談してみよう。社交が恋しいなら、月に1度オンラインでお茶をしないか同僚に聞いてみよう。新しいつながりをつくりたいなら、地元でボランティアを探している団体がないか探してみよう。

 すると、こうした選択肢には、プロフェッショナルとしての能力開発を促したり、スキルを活かしたり、新しいつながりをつくったり、自分の知識ベースと視野を広げたりする「おまけ」がついてくることに気づく可能性が高い。そのすべてが、孤独感に対処する過程で得られるのだ。

 最初の一歩は、アイデアを行動に移すスタートだ。この時、自分の感情をよく観察しよう。もし、新しいステップを踏んでも依然として孤独を感じるなら、ためらわずに同僚や友人など、誰かに自分の経験を伝えよう。

 また、心身の健康に少しずつ、または急激な変化がないか観察しよう。英国医師会雑誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)に掲載された最近の研究によると、社会的孤立や孤独は睡眠障害や自尊心の低下、高血圧、不安、鬱など、心身の疾患リスクを高めることがわかっている。もし、あなたや身近な人が、リモートワークによってウェルビーイングを損なっているという懸念を抱いているなら、医療専門家に相談して、必要なサポートを得よう。

* * *

 職場環境のバランスを取るのは簡単ではないが、いつまでも悲しかったり、ストレスや不安を感じたりする状況を無視しないことだ。仕事は重要で、働き方も大事だが、あなたの健康とウェルビーイングはお金には換えられない価値があるのだから。


"Is Your Remote Job Making You Lonely?" HBR.org, May 12, 2023.