どのような休憩がウェルビーイングとパフォーマンスの向上に効果的か
運動する、ソーシャルメディアを閲覧する、少し散歩をする、人と交流する、仮眠を取る、昼食を取るなど、休憩にはさまざまな形がある。しかし、筆者らの系統的レビューによれば、すべての休憩が同じように効果的というわけではない。「どのように」休憩するかが重要なのだ。休憩に関して考慮すべき点をまとめた。
休憩の長さとタイミング
休憩時間は長いほどよいというわけではない。疲労を防ぎ、パフォーマンスを高めるには、数分間の定期的な休憩(マイクロブレイク)で十分だ。たとえば、短い休憩を取っておやつを食べたり、ストレッチをしたり、窓の外を眺めたりすることができる。さらに、休憩のタイミングも重要で、午前中は短い休憩が、午後の遅い時間には長い休憩が効果的だ。疲労は時間が経つにつれて増すため、午後なると充電のための休憩時間を多く取る必要がある。
休憩の場所
休憩を取る場所によって、疲労回復に大きな違いが出る。デスクでストレッチをするのと、外に出て少し散歩をするのは、一見同じような休憩のように思われるが、充電に大きな差が出る。筆者らの調査では、屋外に出て緑に触れるほうが、デスクにいるよりもリソースの充電にはるかに適している。
休憩中の活動
休憩中に体を動かすことは、ウェルビーイングとパフォーマンスの向上に効果的だ。運動は、精神的に負荷のかかる仕事から回復する手段として特に価値がある。しかし、このタイプの休憩によるプラスの効果は短時間しか続かないため、その効果を得るには定期的に運動する必要がある。
このような利点があるにもかかわらず、運動は従業員が最も好む休憩時間の過ごし方ではない。筆者らの調査によれば、休憩の方法としてはソーシャルメディアの閲覧が最も多く、ほぼ全員(97%)が行っている。しかし、休憩中にソーシャルメディアを閲覧することは、精神的な疲労につながる可能性があるとの研究もある。その結果、人々はリソースを充電する代わりに、創造性や仕事へのエンゲージメントを低下させてしまう。この種の休憩はパフォーマンスを高めるのに有効ではなさそうだ。
動物との触れ合い
筆者らが分析したある研究では、犬と触れ合うことで、ストレスの客観的指標であるコルチゾールというホルモンのレベルが低下することが明らかになっている。パフォーマンスへの影響はまだ不明であり、この分野のさらなる研究が必要だが、休憩時間に動物と過ごすことは多くの従業員にとって効果的なことだと筆者らは考えている。研究によれば、ペットとの触れ合いは個人の心理的ウェルビーイングを大幅に向上させ、ひいてはそれがパフォーマンスに大きく関係する。
休憩を奨励するためにマネジャーや組織は何ができるか
単に休憩時間があるからといって、その効果が保証されるわけではない。従業員が最も効率的な方法で休憩を取っていないかもしれないし、まったく休憩をしていないかもしれない。組織の意思決定者であり、ロールモデルであるマネジャーは、効果的な休憩を奨励する重要な立場にある。いくつかその方法を紹介しよう。
休憩に対する前向きな姿勢を促進する
従業員は一般的に休憩に対して肯定的で、休憩はパフォーマンスに有益であると考えているが、マネジャーとこの考え方を共有しているとは限らない。そのため、従業員の充電が妨げられることもある。休憩がパフォーマンスに及ぼすメリットについてマネジャーが知ることは、非常に重要である。
たとえば、人事マネジャーは会社のウェルネスに関する研修プログラムにその知識を取り入れることができる。また、「ウェルネス・モーメント」(セーフティ・モーメントのようなもの)を実施し、効果的な休憩の取り方を共有したり、休憩中の活動のアイデアを出し合ったりすることもできる。休憩を取ることの利点やベストプラクティスに関するポスターを職場に掲示するだけでも、大きな効果がある。
マネジャーがみずから休憩を取る
マネジャーは、最も効果的な休憩を定期的に取ることで、休憩の重要性を伝え、従業員もそれを真似ることができる。たとえば、定期的に近くの公園で犬の散歩をするマネジャーは、その休憩のために少し仕事から離れることを従業員に伝えることができる。
このような戦略は、よい手本となるだけでなく、休憩時間をじゃましないという明確な境界線を引くことにもなる。模範を示すことで、休憩を取ることにまつわる負の烙印(スティグマ)や罪悪感を防ぐことができる。ますます多くの組織のリーダーがこのことを認識し、十分な休みを取らなかったことの反省を分かち合うようになっていることは、期待が持てる。
休憩時間をスケジュールに組み込む
筆者らの調査では、多くの従業員が定期的に休憩を取ることができないか、あるいはスティグマのために休憩することを躊躇している。したがって、マネジャーと組織は、休憩時間をスケジュールに組み込むべきだ。そして、それは慎重に行なわなければならない。
決まった時間帯に決まった長さだけ休憩するよう従業員に義務づけるなど、厳格な休憩スケジュールは従業員の自主性を低下させ、むしろ悪影響を及ぼす可能性さえある。1日1時間など一定の長さの休憩時間を設け、いつ、どれくらいの頻度で休憩をするかは従業員の裁量に任せたほうがよい。フレキシブルなスケジュールの提供、「休憩チケット」(従業員が好きな時間に1時間休憩できるチケットを毎日配付するなど)といった職場での休憩の革新的な取り組み、またはオンサイトでの社会的または身体的な活動の提供などは、休憩をスケジュールに組み込む最適な例だ。
休憩スペースをつくる
上述したように休憩する場所は、その効果を最大化するうえで重要な役割を果たす。たとえば、屋内に小さな公園のような環境や緑地を設けることで、休憩を促進するという組織としてのコミットメントを示すことができ、従業員のパフォーマンスを高めることができる。屋外での休憩のメリットをさらに高め、動物好きな従業員のためにも、リードなしで犬を遊ばせられるドッグパークを用意するというようなことも検討できる。ペット可の職場に対する需要は高まっており、すでに多くの企業がそうした方針を導入しているため、これは採用の際のツールとしても役立つ。
在宅勤務の従業員がいる組織では、オンライン・パーク・ミーティングを設けることで、リモートワーク中に行きやすい屋外スペースを散歩したり、座ったりしながらミーティングに参加することができる。また、「休憩予算」を割り当てて、従業員に対し、観葉植物やヨガマットの購入を促し、自分の休憩スペースをつくれるようにするのもよいだろう。
従業員のパフォーマンスは常に組織の関心事であり、今日、より多くの組織が従業員のウェルビーイングへの対応に力を注いでいる。仕事中に休憩を取ることは、パフォーマンスとウェルビーングの両方を向上させる有望なツールだ。組織は休憩の重要性を認識し、効果的な休憩を促進するよう計画的に取り組む必要がある。
"How to Take Better Breaks at Work, According to Research," HBR.org, May 31, 2023.