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持続的に生産性を向上させている企業はわずか5%
収益を伸ばすためには、営業およびマーケティングのコストを収益の伸びと同じ割合で増やす必要があることは、ほぼ自明である。営業およびマーケティングの責任者の多くは、長期にわたってチームの生産性をいま以上に向上させることはできないと確信している。コスト削減や効率化を微調整することはできても、本格的かつ持続的な生産性の向上はできないというのである。これは有害かつ自己強化的な考え方で、筆者らの調査では、必ずしも真実ではないことが示されている。
筆者らが注目しているのが「商業生産性」と呼ばれる指標で、商業コスト1ドル当たりに還元される収益(または粗利益)を測定し、営業・マーケティング費用の増加に対して収益がどれだけ早く伸びるかを評価するものだ。商業生産性を長期にわたって持続的に向上させるのは難しいというマネジャーの主張が真実かどうかを理解するため、調査を実施した。
2017~2021年に、世界10業界でB2Bの事業を手掛ける上場企業1254社を分析した結果、業種を問わず、平均的な企業の商業生産性はどの年も横這いで、売上高は営業・マーケティング費用と同じ割合で伸びていることがわかった。ある年に商業生産性を10%以上向上させた企業は19%あったものの、ほとんどの企業はやがて元のレベルに戻っていた。4年間のうち3年間で商業生産性を伸ばした企業はわずか5%だった。
持続的に生産性を伸ばしているこうしたエリート企業は、もう一つ大きな利益を得ている。同業他社よりも年間の株主総利回り(TSR)が有意に高く、その差は平均12%だった。TSRの優位性は、物流・輸送業界の21パーセントポイントから、製紙・包装業界の4パーセントポイントまで幅があった。
筆者らの調査からは、商業生産性を向上させようとして失敗するか、よくても平凡なパフォーマンスに終わる一般的なアプローチが明らかになった。その一つは、コストのみに焦点を当てたアプローチで、これは長期的な成長を妨げる。また、営業・マーケティングに関する最新のソフトウェアや実績のない人工知能(AI)ツールに過度に依存し、それに見合った収益があがらないままコストが増大するケースもある。非現実的な生産性向上を計画に組み込み、それを達成するための具体的な道筋を示さず、結果的に目標を達成できずに営業担当者が辞めてしまうこともある。
生産性で頭抜けた企業は何が違うか
商業生産性のリーダー企業は、3つの側面で何年にもわたって計画的に生産性の向上を追求していることが、筆者らの調査で明らかになった。第1に、こうした企業は市場進出(go-to-market)モデルを洗練させている。第2に、現場の生産性を向上させ、すべての担当者をトッププレーヤーに育てることを目指している。第3に、営業・マーケティングサポートの効率性を見極めている。
市場進出モデルを洗練させる
これには、最も高いリターンを生み出す機会に対して、営業・マーケティング能力をどう配置するかという判断が必要になる。多くの企業が、必要な担当者の数と配置先を決定するうえで、過去の営業データと時代遅れのカバレッジモデルに頼っている。そうしたモデルは劣化する傾向があり、営業とマーケティングの組織の投資収益率を低下させる。
顧客の動向から予想される将来の支出に基づいて、収益と費用のバランスを再調整し、各営業担当者に最適な担当領域を設定するほうがはるかに効果的だ。先進的な企業は、顧客セグメンテーションを調整し、より収益性の高い市場ルートへ顧客を振り分け、適切と判断できる場合にはインサイドセールス、オフショア、eコマースなどの低コストの手法を活用している。