健全な議論に積極的で、足を引っ張り合うことはしない

 よいチームは、メンバー同士で健全な議論を行い、物事の利点と弊害について率直に話し合い、みんなで一緒に代替案を模索する。変革への取り組みに乗り出す前には、じっくり時間をかけて、どのような結果を目指し、そのために何が必要かについて意見を擦り合わせる。

 リーダーシップチームがオープンで正直な議論を行うよう促すことの重要性は、極めて大きい。ある有力な製造企業のCEOは、チームのメンバーが「足並みを揃える」ことを後押しするために、想像をはるかに超える時間を要したと、筆者に語っている。この発言を受けて筆者が思うに、リーダーシップシップとは、チームのメンバーがさまざまな視点を共有し合い、健全な議論を通じて互いの意見に異を唱えやすくする一方で、最終決定が下された後はみんなが足並みを揃えて行動するようコーチングすることなのだろう。

謙虚であろう、客観的であろうと努力する

 どのような企業でも、CEOや上級幹部が謙虚に振る舞うことの重要性は無視できない。そうした姿勢は、組織のあらゆる階層の人たちに浸透していくものだからだ。謙虚であることには、自己満足に陥ることを防ぐ効果がある。たしかに、ほとんどの企業が誇るべきことをたくさん持っているだろう。その点を否定するつもりはないが、未来の機会を追求することよりも過去の成功を誇ることにばかり関心が向くようになると、その企業はたちまちほかの企業に追い抜かれてしまう。

 もうひとつ見落とせないのは、自分自身と自社の現状を客観的に評価することに苦労するリーダーがいることだ。その点、成功している企業は、自社の現状に甘んじず、このままでよいのかとたえず疑問を投げかける。そして、現状を客観的に評価することを通じて、自社の業績を向上させ、ライバル企業を大きく引き離すと同時に、「物言う株主」の攻勢を払いのけているのである。

 ある消費者向けテクノロジー企業のCEOは、最近筆者と会話した際に、取締役会に適切な人物を加えることの重要性、そして、外部からの視点をもたらすために取締役会が果たせる役割について述べた。取締役会のメンバーは、最高幹部たちが広い視野を持ち、潜在的な課題に備え、死角を明らかにするのを助けることができるのだ。

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 今年、この後どのようなことが起きるかはわからないが、当分の間はいまの難しい環境が続くと考えるのが合理的だろう。そのような環境では、高い成果を上げることのできるリーダーシップチームが必要とされる。そして、報われるのもそのようなチームだ。そうしたチームは、目を見張るような成長を実現させ、株主価値を増大させ、そしておそらく、いくらかの楽しさを味わうだろう。みんなで一緒に課題に取り組み、顧客と従業員と地域コミュニティのためにより大きな価値をもたらす経験を共有することができるのだ。


"How the Best Leadership Teams Navigate Uncertain Times," HBR.org, June 22, 2023.