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目覚ましい業績を上げるリーダーシップチームの共通項
インフレの進行や金利の上昇、サプライチェーンの混乱、地政学的な緊張など、いまグローバル経済で多くのことが起きている。しかも、これらの要因に加えて、消費者が企業に求めるものは増加し、市場での競争は激化し、投資家の要求水準もいっそう高くなっている。企業のCEOや上級幹部にとって、かつてないほど難しい時代を迎えている。
こうした複雑な経済状況を考えると、いま一部の企業が目覚ましい業績を挙げる一方で、多くの企業がまずまずの業績にとどまり、なかには会社を存続させることに四苦八苦している企業もあることは、意外なことではない。そして筆者が最近、さまざまな業種の100人を超すクライアントとの話を聞いた結果から見えてきたことがある。成果を上げている企業のリーダーシップチームは、以下の7つの要素を共通して備えていることだ。
「企業ファースト」の文化を育む
リーダーシップチームはたいてい、それぞれの専門領域で高度なスキルを持ったメンバーにより構成される。しかし、高い業績を上げている企業がそうでない企業と異なるのは、リーダーシップチームの面々が「企業ファースト」の文化を受け入れていることだ。具体的には、個人的な課題や目標を追求しようとするのではなく、企業と社員にとって好ましい行動を取ろうとしている。
ある高い業績を上げている製造企業のCEOは、自社のリーダーシップチームの一員であることと、スポーツチームの一員であることの類似性について筆者に語っている。彼いわく、「最優先されるのはあくまでもチームです。スタープレーヤーである個人ではありません」。
全社的な視点で考えて行動する
高い業績を上げているリーダーシップチームのメンバーは、みずからの役割が担当部門にとどまらないと認識している。縦割り型組織の垣根を越えて行動しているのだ。ある有力なデジタル銀行のCEOが筆者に語ったところによると、その企業のリーダーシップチームのメンバーが全社的な思考を持っているおかげで、顧客体験のあり方を根本から考え直し、その結果として業界で最高水準の効率性を実現できたという。この企業がそれを達成できたのは、全社でデータを共有し、データ・ガバナンスのルールを徹底して守っていたからだった。
事業の再構築に徹する
CEOや上級幹部は概して、時間の大半を日々の事業運営に費やしてしまう。その一方で、事業ポートフォリオやビジネスモデルの再構築をどうしても後回しにしてしまう。しかし、競争力のある企業は、事業の思い切った見直しを優先課題と位置づけている。
具体的な取り組みには、比類なきレベルで規律を徹底して事業を運営したり、コストを厳しく管理したり、物事をできる限りシンプルにしたり、成功するためにあらゆる手段を試みたりする、といったことが含まれる。また、ポートフォリオを再構築したり、切迫感を持って、バックオフィス、ミドルオフィス、フロントオフィスを刷新したりすることも、そのような行動に該当するだろう。
ある製薬企業のCEOは、製薬ビジネスにイノベーションを起こして、業界のあり方を大きく変えたいという考えの下、わずか数カ月の間に、最新の商取引・市場プラットフォームに基づく大胆で新しいビジネスモデルを実行した。それにより、顧客に直接アクセスするためのより優れた方法が実現した。利益率は向上し、自社のバリューチェーン全体で信頼性と透明性が改善した。
しかるべき人材を既存の業務から解放して、難題に対処させる
企業のあり方を刷新しようとする人物には、その取り組みに専念することが不可欠だ。ほかの日常業務に忙殺されないようにしなくてはならない。高い業績を上げているリーダーシップチームは、難題に集中的に取り組む時間を確保し、それ以外の日常業務はほかの人たちに委ねている。
ある大手エネルギー企業のCEOは、最上層部のリーダーの一人を、全社的なビジネスモデルの変革に向けた取り組みに専念させた。これは、変革が成功する確率を高めることに加えて、すべてのステークホルダーに対して変革の重要性を印象づけることが狙いだった。リーダーを既存の業務から解放することは簡単ではないが、それでもリーダーを変革の取り組みに専念させることの意義は極めて大きい。
このエネルギー企業で変革のリーダー役を担った人物は、標準化とシンプル化を推し進め、莫大な価値とコストの最適化を導く一方で、リーダー層のコミットメントを強化し、組織の対応体制を充実させ、ビジネス上の成果を持続可能なものにした。
メンバーに多様な経歴やスキルの人物が含まれる
質の高いチームは、あらゆる側面において包摂性が高い。具体的には、ジェンダーや民族の面での多様さだけでなく、多様な視点と経歴、スキルを持ったメンバーによって構成されているのだ。企業の最高幹部チームには、多様性のあるメンバーを集めることが非常に重要だ。
さまざまな専門性や視点の持ち主でチームを構成することにより、より強力にイノベーションを推進し、変革を加速させることが可能になるのである。最高幹部チームのメンバーとして、最高テクノロジー責任者、最高人事責任者、最高コミュニケーション責任者といった人たちが加わっている理由は、この点にある。
ある大手テクノロジー企業のCEOは、あまりに多くの企業で最高経営幹部チームのスキルの多様性が欠けていると、筆者に語った。この傾向は、テクノロジー関連で特に際立っているという。その結果として、リーダーシップチームは、変革を目指すに当たり、どのようなことが可能なのかを明らかにできず、新しいテクノロジーなどのツールがそのためにどのように役立つかを理解できない場合がある。そのようなケースでは、リーダーシップチームは、未来を構想しようとするのではなく、既存のテクノロジーを強化する戦略を追求するという落とし穴に陥りやすい。