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取締役会で自身の存在価値をいかに高めるか
ほとんどのエグゼクティブにとって(たとえ最高経営幹部でも)、取締役会でのプレゼンは、リーダーシップコミュニケーションが最も試される時だろう。これに成功する人は一握りしかいない。
過去10年間に上場、未上場企業の取締役を務めた100人以上と話をした結果、ほぼ全員がプレゼンに関する不満を口にした。パワーポイントのスライドが長すぎたり、細かすぎたり、情報不足だったりするというのだ。
しかし最高幹部の多くが受け取るフィードバックは「さらに簡潔に」「スライドを減らせ」「オペレーションの細部に囚われるな」など月並みで、役に立たないことが多い。オペレーション担当幹部は戦略が不十分だと言われ、戦略責任者はオペレーションの部分が薄いと言われたりする。その結果、取締役も、プレゼン担当者も、フラストレーションを抱えて会議を終えることが多い。
残念ながら、話し方のプロのコーチがくれるアドバイスも、経営幹部を混乱させる可能性が高い。「お腹から声を出して」「箇条書きを減らして」「ストーリーを伝えて」など、ありきたりな助言は、取締役会でのプレゼンで重要なのは演出であり、顧客向けのスピーチの派生形だという思い込みに根ざしている。
こうしたアドバイスは、取締役会のパーパスと価値を誤解している。取締役会でのプレゼンは、独特の準備が必要となる。そこは経営幹部の知識と、ベテラン取締役の客観的な見解の両方を活用した、より高度なやり取りが求められる場なのだ。
筆者は15年以上にわたり、経営幹部が取締役会レベルの場で行うプレゼンの準備をコーチしてきた(次期CEOの「オーディション」のコーチを含む)。その結果、このようなプレゼンにおける経営幹部の最も重要な任務は、自分の担当事業についての自分なりの見解を示すことだという結論に達した。
直近の四半期の業績を報告するだけではなく(そんなものは取締役自身で読める)、みずからが直面している最も差し迫った課題と対処策を説明して、取締役をディスカッションに引き込むべきだ。
どの取締役会にも、その会社の経営環境によって独自のニーズがあるが、取締役会でのプレゼンの質と会社上層部における自身の価値を高めるために、すべてのビジネスリーダーが取り入れるべき3つの方法を紹介しよう。
1. 力強いメッセージを示す
取締役会に出席する経営幹部は通常、CEOと法務チームによる入念なチェックが入ったスライドをかなり前に準備して提出している。したがって、ほとんどの場合、取締役はその資料をすでに読み込んでいるか、少なくとも主要なポイントには目を通しているはずだ。では、緊張したプレゼン担当者が、10~30分の持ち時間にやるべきことは何か。
急いでスライドをすべて見せるのは、取締役らの気持ちを切り替えるよい方法になるかもしれないが、トピックに関する理解を深めてもらう役には立たないし、リーダーとしての自分のスキルを見せる役にも立たない。そうではなく、あらゆるプレゼンは統括的な命題、つまりディスカッションの最大のポイントを示す大きなアイデアや見解を、明確にすることから始めるべきだ。このように始まるプレゼンは、聴衆に説得力のあるメッセージとして印象づけることができる。
ジョンソン・エンド・ジョンソンやターゲット、LPLファイナンシャル、ウイリアムズソノマなど、多くの企業の社外取締役を務めてきたアン・ムルケーヒーは、大量のスライドに大量のデータや情報を詰め込む経営幹部に苛立ちを感じてきた。「まるで、自分が会社のビジネスをどれだけよく知っているか示すことが目的のようだ」と語る。「これでは逆効果です。取締役には、プレゼンのポイントがわからない」。
これとは対照的に、「命題マインドセット」を持つと、プレゼン担当者は過去の事実を暗唱するのではなく、未来について語るようになる。命題ベースのプレゼンは、大胆な提案や資金要請である必要はなく、取締役会が注目すべき問題を提示する必要がある。少なくとも、「私の担当部門はこの方向に向かっている」と伝えるものであるべきだ。また、それをスライドの19ページ目に挿入するようではいけない。冒頭に、大きくはっきりと示す必要がある。こうすれば、少なくとも、的外れな質問や居眠りを防げるだろう。