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問題社員のモチベーションなど高めようもない
周知のとおり、優れたマネジャーは、自らが掲げるビジョンの力によって、また計画の実現に賭ける意気込みによって、あるいは自身の思想を支える強力な論理によって、社員のモチベーションに訴えかける。ここに適切なインセンティブが加われば、社員は正しい方向に向かってまっしぐらに進んでいくものだ。
これは、理想的なマネジャー像を説く数々の書物によって、人口に膾炙したイメージである。しかし、決定的に間違っているところがある。このような戦略が奏功するのは、ごくわずかな社員についてであり、またこれを可能ならしめるマネジャーはその数よりもさらに少ない。
なぜだろう。一つには、部下を奮い立たせるという特殊な才能に恵まれたマネジャーがそもそも稀少な存在だからである。
ほとんどのマネジャーに「ネルソン・マンデラやウィンストン・チャーチルのようになれ」と説いたところで、自責の念や無力感にさいなまれるのが関の山というものだ。
もう一つの理由は、第三者による刺激──叱咤激励しようと、札束をちらつかせようと、「後で後悔するぞ」という脅しでさえ──には限界があることだ。あらゆる事例がこれを証明している。それに、このような刺激によって突き動かされる社員たちは、すでにフル稼働中である。
問題なのは、これ以外の社員たちである。マネジャー諸氏ならば、だれでも手痛い経験ゆえにご承知のはずだが、こと人材マネジメントには「80対20の法則」が当てはまる。すなわち、いちばん扱いにくい社員たちに、あなたの法外な時間とエネルギーが強いられるのである。
では、どうすればこのような社員たちを、あなたの指揮に従わせられるのだろうか。どうすれば、あなたが推し進める施策を支持するだけでなく、実際にそれに従事するようにやる気を起こさせ、打ち込ませることができるのだろうか。
私は30年にわたって企業組織を研究し、マネジャーたちにアドバイスしてきた。この経験から「これらの疑問そのものが大間違いである」という結論に達した。