言い換えれば、西側諸国は工場の仕事を中国にアウトソースしたのに対し、近い将来、「デジタルの仕事」をサハラ以南のアフリカに多面的な方法でアウトソースすることになる。デジタルの仕事は、音楽からソフトウェア開発、プロンプトエンジニアリングまで多岐にわたる。日本や韓国のように出生率が低い国にとって、サハラ以南のアフリカは、自国経済を遠隔地から支える、容易に利用可能な人材基盤を提供する。

 サハラ以南のアフリカではブロードバンドの普及が進んでいるため、それを可能にするインフラが存在する。地上のブロードバンドの拡大とともに、スペースXの衛星ブロードバンドサービス「スターリンク」の登場が、都市部と農村部双方における接続性の向上に期待をもたらしている。また、太陽光を利用してエネルギーサービスを提供する再生可能エネルギーのスタートアップによって、若い技術者はインフラの課題を克服しつつあり、グローバルなデジタル経済への参加が容易になっている。

 こうしたシフトによって、サハラ以南のアフリカの若い労働者たちは、いまいる場所で収入を得ることができるようになる。その収入が海外からのものであれば、彼らは地域経済に貢献し、地域経済を大規模に変革する能力をも手に入れる。実際、デジタルの専門家の中には、国際的な組織で働いたのちに会社を立ち上げ、その過程で若い才能を育てることを決意する人もいる。

 アフリカには少なくとも7社のユニコーン(評価額10億ドル以上の新興企業)が存在し、それらが上場したり、大規模な多国籍企業に買収されたり、高配当を支払う能力を持つまでに成長すれば、生み出された富は開発を加速させるために使われるだろう。

 さらに、仕事はデジタルな性質を有しているため、都市部に留まる必要もない。たとえば、デジタルスキルのアウトソーシングを手掛ける新興企業のアンデラは、インターネットサービスさえ整っていれば、サハラ以南のアフリカのどこからでも労働者を雇用する。

 しかし、これを拡大し、成功させるためには、政策レベルでも実施レベルでも、以下の点を考慮しなければならない。

 質の高いデジタル教育:新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、サハラ以南のアフリカ諸国のデジタルレディネスがいまだ非常に低いことを浮き彫りにした。中国、米国、欧州の多くの大学はリモート教育に移行できたが、アフリカの大学の多くはそれができなかった。若者の大きな可能性を引き出すためには、将来の知識経済を支えるインフラの構築が不可欠である。

 租税条約とハーモナイゼーション:ナイジェリア、ガーナ、ケニアといったサハラ以南のアフリカを代表する経済圏では、若者のほとんどが欧米やカナダの大手企業で働いている。地域の政策立案者は、これらの労働者が公平に補償を受け、法律で定められた通りに現地の税金を支払うようにしなければならない。グローバル企業がこれらの人材を雇用し、育成することを容易にする明確な政策を、地域の開発の優先事項に含むべきだ。また、負担の大きい課税が若い労働者の意欲を削がないようにすることも重要である。そのためには、租税条約の効果的な実施とハーモナイゼーション(国際的調和)が必要だ。

 アウトソーシングに特化したスタートアップ:地域や国の政策は、アウトソーシングに特化したデジタル企業の能力向上を目指して策定されるべきだ。アンデラのように評価額が15億ドルを超える企業は、若者を育成し、彼らのデジタルスキルを世界に輸出する一方で、アフリカに留まっている。欧州、アジア、北米に駐在するアフリカの大使館や公館は、アフリカの若者を雇用するためのパイプラインを提供し、主要な顧客とのつながりをサポートすることができる。

 サハラ以南のアフリカには、知識経済の原動力となる若者がいる。国連によれば、「アフリカの人口は世界で最も若く、サハラ以南のアフリカの人口の70%が30歳未満である」。彼らにより高度なデジタルスキルを教育し、訓練すれば、サハラ以南のアフリカは数十年以内に発展を遂げ、独自の産業化を経験するだろう。


"Digital Skills Provide a Development Path for Sub-Saharan Africa," HBR.org, July 25, 2023.