アフリカの未来を切り開く、若者のデジタルスキル教育
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サマリー:サハラ以南アフリカは、人口集中による都市化が進む一方で、産業化が進んでいない。このため、失業率が高く、若者の貧困率も高い状況に陥っている。そこで必要になるのが、若者のデジタルスキルを活かした新たな開発... もっと見る戦略だ。本稿では、アフリカの若者がデジタルを活用してクリエイティブに活躍し、独自の産業化を実現するための道程を示す。 閉じる

中国の模倣はもはや通用しない

 サハラ砂漠以南のアフリカでは、農村部から都市部へ人口が移動し、都市化が進んでいる。しかし、数十年前や数世紀前の西欧諸国の都市化とは異なり、サハラ以南のアフリカには重要な要素が欠けている。それは都市の産業化だ。産業化が都市化に先行した西欧とは異なり、サハラ以南のアフリカの都市は、わずかな製造業の生産高と工業力で成長している。

 その影響は非常に大きい。予想を上回る人口増に対処するため、基準に達しない住宅や不十分なインフラしか整備されず、過密状態になっている。税金が限られているため、都市化が進む一方で資金不足に陥っており、医療の提供や社会福祉全般で深刻な問題に直面するおそれがある。また、気候変動がラゴスやナイロビといった大都市に影響を及ぼしており、アフリカは緊急の解決策を必要としている。

 スタティスによると、サハラ以南のアフリカの都市化率は、2021年時点で平均約41.83%である。アフリカが世界の製造業生産高に占める割合は、わずか2%にもかかわらず、だ。これは、仕事を求めて都市部に移り住んだ人々が職を見つけられておらず、その結果、特に若者の失業率が高くなっていることを意味する。ブルッキングス研究所は、アフリカの若者の失業率を約60%と推定しており、国連貿易開発会議(UNCTAD)によれば、アフリカのほとんどの国で貧困率は50%を超える。

 この急速な「産業化前の都市化」がもたらす課題は、未来よりも過去に目を向けた産業化政策など、多くの要因によって悪化している。サハラ以南のアフリカ諸国の指導者らは長年にわたり、中国で成功したことを模倣する戦略を構築してきた。この戦略は、中国の賃金が相対的に高くなれば、欧米諸国が低レベルの工場労働をアフリカにアウトソースし、勢いのある製造業を活性化できるという期待に依拠している。

 しかし、筆者が以前にも指摘したように、アフリカが中国の戦略を追求しようとするのは大きな間違いである。

 中国で機能したことは、AIやロボットの進化によってすでに有効ではなく、西欧や米国がこうした低レベルの仕事の一部を国外にアウトソースすることはほぼありえない。そうした仕事は国内でロボットが行うようになる。サハラ以南のアフリカの政策立案者たちは、地域の現状を考慮した新たな開発戦略を構築しなければならない。

 幸いなことに、その新たな開発戦略はすでに展開されている。そしてそれは、サハラ以南のアフリカにあふれる若者たちを軸としたものだ。

 ここ数年、アーリーステージのベンチャーファンドであるテケディア・キャピタルと、数千人の学生を抱えるビジネススクールのテケディア・インスティテュートを運営する過程で、筆者は各セクター、中核的な経済指標、フリーランス、オフショア雇用などに関する膨大なデータを収集してきた。そのデータセットをもとに筆者が考えるこの地域の発展は、高度なデジタルスキルを身につけた若者を介して実現する。地域の若者はデジタルに精通していてクリエイティブで、地域を超えて世界的に潜在能力を発揮できるよう支援されれば、大きな変革を起こすことができる。若者たちは、インターネットがもたらした制約のない機会を通じて、西欧、米国、アジアにデジタルスキルを輸出することができる。