フィードバックはツールだと考える

 あなたがどのような考えであろうと、チームは有意義で率直なフィードバックを切望している。従業員の72%は「マネジャーが批判的なフィードバックをすること」は自分のキャリア開発において重要だと評価している一方、マネジャーがそうしたフィードバックを提供していると考える人はわずか5%だ。同様に、上司が率直なフィードバックをくれるとチームメンバーが感じていない場合、彼らのエンゲージメントのスコアは急降下するのが一般的である。だが裏を返せば、率直なフィードバックを与える能力が上位10%に入るリーダーは、エンゲージメントが上位23%に入るチームをつくっている。

 チームの成長に必要な情報を奪うのは適切ではない。対立は、リーダーシップの健全で規範的な事象だととらえ直すと、難しい話題を切り出す時に感じる予期不安を和らげることができる。次にフィードバックをしなければならない時は、深呼吸をして、あなたは対立を引き起こしているのではなく、部下を成長へと導いているということを思い出してほしい。批判をしているのではなく、育てているのだ。あなたは悪役でなく、彼らに必要なリーダーだ。

不測の事態を想定する

 未知の事態を恐れたり、相手がどのような反応を示すか心配したりすると、多くのリーダーは率直に意見するのをためらう。部下が防衛的になって、食ってかかってきたらどうすればよいのか。泣き出してしまったらどうすればよいのか。

 不安を鎮め、不確実性に対処するには、「最悪のケース」「最善のケース」「最も可能性の高いケース」のツールを使う。起こりうる最悪の事態を考えてみる。たとえば、従業員が泣き出したら、どう対処するだろうか。おそらく中断するだろう。次に、楽観主義を培うために、起こりうる最善のことを考える。最後に、最も起きる可能性の高いことを考える。それは通常、最悪と最善の間にある。

力強く始める

 会話の始め方を計画することで、「思考の渦」を和らげることもできる。最初から主導権を握ることで、自信が高まり、敬意を持って会話ができる。フィリップは、アンジェリークの状況に正面から取り組む必要があると認識し、彼女にこう言った。「あなたの献身と創造性を私は評価しています。私が話し合いたいのは、士気が低下するパターンについてで、一緒に対処できる障害があるかどうかを私は把握したいのです」

「私」を可能な限り使うことで、率直に内容を伝えることができる。単に恐れているという理由で動揺したり、必要以上の懸念を抱くことが少なくなる。「またミスをした」と言うよりも、「今日のクライアントとの打ち合わせに書類が間に合わなかったことが心配だ」と言うようにする。

フィードバックをプロセスの一部にする

 フィードバックは定期的に行うべきで、非難を爆発させるものではない。フィードバックを習慣化することで、あなたが抱く小さな困惑や不満が大きな衝突に発展することがなくなる。さらに、恐怖を感じる状況に徐々に身をさらすことが、恐怖を克服する最善の方法だ。自分の役割の一部として、リスクの低い日常的な場面でフィードバックをする練習をすればするほど、それが巧みになる。

 フィードバックを体系化する素晴らしい方法は、チームメンバーと定期的に一対一で話し合うことだ。また、チームメンバーが振り返ることのできるプロジェクト報告会や、リスクや潜在的な問題について前もって話し合い、互いにどのように協力するかを具体化する事前の論議を計画することもできる。

 積極的なフィードバックの文化をつくることで、新たに獲得した、率直に意見を述べるスキルを発揮する機会を得ると同時に、チームとの信頼関係を強化することができる。そしてそれは、リーダーとしてあなたが望む最も重要なことの一つだろう。


"Overcoming Your Fear of Giving Tough Feedback," HBR.org, July 26, 2023.