「マイクロネイチャー」を活用する

本物であるに越したことはないが、人工物でも効果はある

 自然を取り入れることに関していえば、「本物」に接するのが理想だ。屋内に噴水をつくったり、窓から自然が見えるようにしたり、鳥のさえずりなどの自然の音が入るようにしたりするに越したことはない。しかし、本物でなければまったく恩恵がないわけではない。研究によると、壁画や造花など、自然を描いたものでも効果がある場合がある。

対象はオフィスで働く人だけに限られない

 言うまでもなく、自然の恩恵を受けられるのはオフィスで働く労働者だけではない。倉庫や工場など、とりわけ自然と切り離されているように感じられる環境で働いている人たちも、職場に自然が取り込まれると、それに反応して、好ましい影響を受ける可能性が高い。それまでの職場環境との落差があまりに大きいためだ。

職場以外で自然に触れることも有効

 自然が恩恵をもたらすのは、仕事中に触れる場合だけではない。筆者らは、勤務時間後に屋外で時間を過ごすことの仕事への好影響についても調べた。研究によると、前の晩に屋外で時間を過ごした人たちは、そうでない人たちに比べて、翌日の仕事の生産性が高かった。その効果は、ハイブリッドワークやリモートワークで働く人たちの場合、ひときわ大きかった。私生活で自然に囲まれることの好影響は、仕事にも波及するのだ。したがって、従業員が退勤後に散歩することを奨励するだけでも、翌日の仕事の生産性を高める効果があるのかもしれない。

未使用のスペースや、十分に活用されていないスペースを活かす

「マイクロネイチャー」は、その名の通り小規模なものでもよい。自然を連想させる色で壁を塗ったり、休憩室に花を置いたり、窓の外に木を植えたりするといったシンプルなことでも有効かもしれない。そこでマネジャーは、職場やその周辺の未使用のスペース、十分に活用されていないスペースに目を向けるとよい。手軽に、そしてあまりコストをかけなくても、自然を取り入れられる場所はないだろうか。たとえば、無機質な駐車場に木を植えれば、従業員の士気が高まるかもしれない。

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 筆者らの研究によると、職場で働き手が自然に触れられるようにする効果は、サステナビリティの側面だけに留まらない。働き手のウェルビーイングと仕事の成果にも好影響が及ぶ。その意味で、自然に触れられる職場をつくることは、やりがい、公正な給料、敬意のある処遇とともに、よりよい職を提供するうえで有効な要素になりうる。これらの要素をすでに提供していて、さらに職場環境の質を高めたいと考える企業にとって、「マイクロネイチャー」は極めて有力な選択肢なのだ。


"Research: A Little Nature in the Office Boosts Morale and Productivity," HBR.org, July 21, 2023.