サポートを集める

 企業は、十分に関心がある場合に限ってあなたの提案を検討する。あなたの「なぜ」が明確になり、ビジネスケースの準備ができたら、次は支持を集める番だ。ナディアに、他に頼れる従業員はいるかと尋ねると、「かなりの数がいます」とのことだった。彼女は社内でグーグルフォームのアンケートを作成し、イスラム教徒のためのウドゥ用シンクができた際にその恩恵に浴する同僚から回答を集めた。

 次に、シニアリーダーを巻き込む必要があった。マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、経営幹部と強い結びつきを持つERGリーダーは、結びつきの弱いリーダーよりもリソースや資金を獲得しやすい。支援をお願いできるアライ(味方)やスポンサーに話をすることが重要だ。ハムザはそれを実行し、イフタールに対して多くの賛同を得ることができた。イフタール前に、ラマダン・チャレンジに参加したがる人さえいた。強いコネクションと上層部の目に見える支援者を活用することによって、その取り組みが組織に真剣に受け止められるようになる。

 自分のアイデンティティグループから取り組みを擁護するのに十分な人数が得られなくても、他のERGに支援を求めることはできる。ERGリーダーと会話する方法として以下の例がある。

「私はあなたのネットワークの取り組みに参加することが好きでした。参加したことで、なぜあなたのネットワークが重要なのか、なぜ私たちのニーズを知ってもらい、認めてもらうことが不可欠なのかを認識できました。あなたに触発され、XYZにリソースを割り当てるよう経営陣に要請しました。経営陣に働きかける準備をするうえで、あなたのネットワークから支援をいただくことはできますか」

 こうすることの利点は2つある。まず、ERGリーダーの支援を受けられることだ。次に、あなたが必要なものを確保できなかった場合、彼らがプログラムを企画・運営してくれる可能性があることだ。各ERGがそのリソースを組み合わせ、社会的インパクトのある取り組みを共同で提唱することは珍しくない。しかし、双方に利益をもたらす結びつきは互恵性に依存していることを忘れてはならない。彼らの支援を期待するのであれば、あなたも彼らの明確なアライにならなければならない。

具体的な要求と柔軟な対応

 前述したサルマンの例では、彼がチャリティ活動のイニシアティブを取り、必要とするものを具体的に組織に求めた。それは、オフィスのホールを使ってベイクセール(菓子を販売する募金活動)を開くこと、社内報や全社的なメールで活動について言及すること、オフィスのキッチンで商品を保管することなどだ。

 求めたものが得られなかった時のことを考えて、柔軟に対応できるように準備しておくことも大切だ。要求は最初から大きく出すのではなく、小さい要求から始め、組織から最低限の合意を得られるようにする。その姿勢で組織との対話を始めることだ。組織からイベントの予算が下りない場合は、少なくとも全社的な支援と連帯を示すメールを送るよう依頼する。また、他のネットワークと連携し、リソースや予算を共有できないか確認する。「ノー」と言われても永遠に「ノー」というわけではない。数週間後、数カ月後に状況が変わったら、再び要求すべきだ。

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 ERGは、従業員の帰属意識を育み、その可能性を伸ばすうえで不可欠である。その活動が継続できるように、組織の支援が必要だ。組織にはすべてのアイデンティティグループを包摂し、すべての社会的大義を等しく支持する必要があるが、強固な後押しをせずにそれが実現すると期待するのは浅はかである。制度的な不平等や組織的なバイアスが根深く残っており、リーダーたちは積極的にその払拭を試みなければ、自己満足にとどまる。

 一部の声がしばしば矮小化されたり、まったく聞き入れられなかったりするシステムに立ち向かうには、ERGのリーダーやメンバーが臨機応変に対応し、より戦略的に自分たちの要求を伝える必要がある。組織がイニシアティブを取るのを待つと、長い時間がかかるだろう。何もせずに意見を聞いてもらえないよりは、強く働きかけて聞く耳をもってもらったほうがよい。

*プライバシー保護のため、個人名を変更しています。


"How to Secure Support for Your ERG's Initiatives," HBR.org, July 31, 2023.