新しいキャリアを始めたばかりだと、周囲に知り合いがまったくいないと感じるかもしれない。しかし、テクノロジーを使えば、数回クリックするだけでさまざまな世代とつながることができる。新しい分野のプロフェッショナルが集まるソーシャルメディアのアカウントをフォローするとよい。

 リアルな人脈をつくりたいなら、地域のプロフェッショナルの団体に参加したり、関連する業界のイベントやカンファレンスに参加したりすることも検討したい。在籍した学校の同窓会の役員に連絡を取ってみるのも一つの方法だ。あなたが目指すキャリアを歩んでいる他の卒業生を紹介してくれるかもしれない。

3. 想定している10倍の求職活動をする

 起業家であり作家のグラント・カルドンは、ベストセラーとなった著書The 10X Rule(未訳)で、最初の想定よりも10倍大きな目標を設定することを提唱している。このアプローチでは、目標達成に必要だと想定している10倍以上のことをする必要がある。

 これを求職活動に適用すると、面接を受けるために20の職務に応募する必要があると推定した場合、少なくとも200の職務に応募することを覚悟すべきだ。キャリアチェンジの求職活動に関しては、筆者はカルドンに100%賛成する。

 人脈づくりから業界研究、インフォメーショナルインタビューまで、あらゆる行動をスケールアップさせよう。カルドンは同書の中で、行動には4つのレベルがあると説く。1つ目は「何もしない」、2つ目は「退く」、3つ目は「通常レベルの行動を取る」、そして4つ目は「大規模な行動を取る」だ。筆者はコーチとしてキャリアチェンジャーたちに、通常レベルの行動と比べて圧倒的に大規模な行動を探求し、より大きく考えるよう指導している。

 これは、あなたが思っているよりも単純なことだ。仕事を探そうとしている人(筆者にとってはクライアント)に対して筆者はある重要な質問を投げかける。「新しいチャンスを見つけ、転職しようとしていることを誰に報告するか」。クライアントが名前を列挙すると、筆者はそれを数え、少なくともその10倍以上の人とつながるという目標を設定するよう勧める。

 たいていの場合、クライアントは少し心配そうな顔をし、自分のキャリアプランについて話せる親しい知り合いはそれほどいないと言い始める。もっともな言い分だ。しかしレバレッジを効かせれば、10倍の活動ができる。

 話をする予定の人が5人いるのなら、それぞれの人に「私が話をすべき人を2~3人推薦してもらえますか」と尋ねる。最初は5人だった人脈リストは、20人に膨らむ可能性がある。次に、新たに追加された15人にも同じことを依頼する。その15人がそれぞれ2~3人を推薦してくれれば、好スタートが切れる。いつの間にか大規模な行動に突入しているはずだ。

4. 難しい質問に答える練習をする

 採用面接に備える時は、聞かれる可能性のある難しい質問を考え、自信を持ってキャリアチェンジを説明できるようにしておこう。

 最も難しい質問から着手することを筆者は強く勧める。キャリアチェンジャーとして年齢バイアスが懸念される場合、質問は次のようなものかもしれない。「あなたの○○での経験は限られているようです。これまでのスキルセットや経歴が、この職務にどのように合致すると考えていますか」

 この質問で緊張するのなら、回答のアイデアを書き留めることから始めよう。そのリストには、雇用主が求めるコアスキルに関連する転用可能なスキル、あなたが追求している専門的な能力開発や教育、あるいは以前のキャリアにおいて不慣れな環境で新しいスキルをうまく取り入れた例などを含めることができる。

 そして、回答の練習をし、最も難しい質問に答える自分の姿を録画する。ビデオ録画を勧めるのは、質問に対する自分の答え方を聞くだけでなく、ボディーランゲージも観察できるからだ。そうすることで、自分が自信に満ちているように見えるか、ストレスを感じているように見えるかを客観的に見極めることができ、自分が明瞭かつ簡潔か、それとも要領を得ないかを判断することができる。

 面接は、あなたの現在のスキルセットだけでなく、成長し、適応する可能性を評価するものであることを忘れてはいけない。雇用者は多くの場合、適切な態度や学ぶ意欲、新しい課題に挑戦する能力を持つ候補者を評価する。

 採用プロセスを通じて、予期せぬ障害に直面することも想定しなければならない。たとえば、採用ソフトウェア会社のグリーンハウスが最近発表した採用候補者の体験リポートによると、求職者の67%が求職中に雇用者から突然連絡を断たれた経験がある。大規模な行動を取るようにすれば、一度のつまずきで進路から外れることはない。

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 近々予定されている面接に不安を感じているなら、このことを覚えておいてほしい。採用マネジャーは、求めている役割をこなせる能力がなさそうな人は書類選考の段階で見切りをつけ、わざわざ時間をかけて面接はしない。履歴書の弱点と思われる部分について詳しく質問されても、批判とは受け止めないこと。その質問は、自分を知ってもらう手掛かりを提供する機会だととらえるのである。

 自分の経歴を軽視せず、これまで進んできた一歩一歩に誇りを持とう。ジョブディスクリプション(職務記述書)のすべての条件を満たす候補者など、まずいない。そして、その雇用者がより重視する要件や特徴、スキルが必ずある。

 あなたの経験すべてが財産だ。発展し、進化し続ける新しいキャリアパスを構築する自分の能力を信じよう。


"4 Strategies to Prepare for a Late-Career Shift," HBR.org, August 08, 2023.