自分と自分のキャリアを守るために

 同僚との状況を解決する責任を、あなた一人に負わせようと言っているのではありません。上司、人事部門、ほかのステークホルダーなど、権限のある誰かが、あなたの訴えに応えてくれることが望ましいでしょう。それが実現しない場合、あるいは上司が何事もなかったかのように振る舞い続ける場合は、あなた自身を守るための手段を取ることを強く勧めます。

引きずり込まれない

 社内政治家に対し、彼らの得意な分野で打ち負かしたくなるものです。相手があなたの上司の前で嘘をついたら、あなたも同じことをしたくなるかもしれません。しかし、それは間違っています。競争心から来る不健全な態度はあなたの印象を悪くするだけです。あなたまでつまらない人間に見られたり、自分の価値観に合わないことをしたりするのは避けましょう。

自分の仕事ぶりを周囲に知らせる

 社内政治家と仕事をしていると、あなたの評判やキャリアが悪影響を受けかねません。生産的かつ倫理的な方法で、あなたの功績を知らせるべき人々に知らせましょう。たとえば、自分のプロジェクトの状況や、ほかのチームに時間やアイデア、労力を提供していることについて上司に随時報告する、全社会議で自分が主導している施策の概要を共有する役割を引き受ける、などが考えられます。

 私は正式に任命されていないプロジェクトを非公式なアドバイザーとして手伝うようになった時に、随時上司に話をして、「これまでの決定事項に関して意見を述べる機会に恵まれました」などと報告しました。そして、そのプロジェクトチームが事業部会議で発表した際は、出席者に私が関与していることを示すような質問をみずからしました。こうしたさりげない方法で私の認知度を上げることは、より政治的な同僚に手柄を横取りされないためにも役に立ちました。

 出世欲の強い同僚が、あなたの功績を自分の手柄にしようとしたり、会社で注目されている施策についてあなたの関与を小さく見せようとしたりするなら、あなたの仕事内容を上司へのメールなどで文書化しておくことも有効です。物理的な証跡があれば、社内政治家があなたをおとしめようとすることを阻止しやすくなるでしょう。

嘘に対処する

 事実を歪曲する同僚と対峙していると、どちらが本当のことを言っているのかという争いになりがちで、いら立ちも募ることでしょう。事実誤認を指摘し、反対の証拠を示すことが可能なら実行しましょう。

 最初は個人的に行います。たとえば、次のようなメールを送ることもできます(これはのちに、あなたが誠意を持って努力していたという証拠にもなります)。「新機能の導入について、なぜあなたは認識していないと言ったのか、私は困惑しています。下記のメールのスレッドにある通り、私たちは9月にこの機能について議論しています」。このように相手の策略をやんわりと暴き、今後は許さないと釘を刺すのです。

手柄泥棒に手を打つ

 同僚があなたの手柄を横取りする時は、まず相手に質問します。「プロジェクトについて話す時、あなたは 『私たち』ではなく『私』と言っていました。あれは意図的ですか。なぜあのような言い方をしたのですか」

 質問をすると、説明責任は同僚に移ります。自分の手柄とした理由を彼らが説明しなければならないのです。手柄の分け方も事前に確認しましょう。これらの合意事項を書き留めておき、プロジェクトの関係者全員で共有しておくと、誤解が生じません。

相手の逸脱行為と自分の成果を記録する

 一日の終わりに、あなたとあなたのキャリアを守るためにも、物事がこじれた場合は同僚の問題行動を記録しておきます。考えうるすべての反撃に備え、時間、場所、言動の内容、誰がやったのか、誰がその場にいたかを記録します。また、それに対するあなたの言動も記録します。骨の折れる作業かもしれませんが、このような記録を長期にわたって残せば、不当な扱いには一貫性があり、破壊的で、継続的なものであることを示すのに役立つでしょう。

 同時に、あなたの成果も記録し、同僚との関係の影響によって埋もれてしまわないようにします。週1回の短いメールでもかまわないので、定期的に成果を上司へ報告しましょう。これは自慢話ではなく、会社におけるあなたの価値を示すための手段です。

 組織内のほかの人たちにも、あなたの成果を知ってもらう方法を考えてください。たとえば、部門横断的な施策にボランティアとして参加したり、有力な幹部が手掛けるプロジェクトに参加したりして、ほかの部署や社内の上層部に自分の働きを知らせましょう。新しい人脈を開拓し、あなたの才能を広くアピールするのです。理想的には、同僚が広めているかもしれないあなたの偽情報について、払拭する機会を得ることができます。

 残念ながら、あなたの同僚が望ましい同僚になるように強制することはできません。実際、上司にもそれはできません。あなたが上述のアドバイスのいくつかを実践して、同僚がより生産的な行動を取るよう促したり、あなたが最低限同僚による悪影響から自身を守ったりすることができるように願っています。

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"Getting Along: My Coworker Is Sabotaging Me ── and My Boss Won’t Help," HBR.org, August 10, 2023.