
-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
リーダーシップ論、組織行動論の大家がたどり着いた「人間の性質」
本書『CHANGE 組織はなぜ変われないのか』の「はじめに」は、この本の主張がどのように形づくられたのか、記述の根拠がどこにあるのかを知りたい読者に向けたものだ。
本書につながる研究の原点は、数十年前にさかのぼる。最初は、「変革」を主なテーマにしていたわけではなかった。当時の主たるテーマは、広い意味での成果だった(その関心はいまも失ってはいない)。大きな成果を上げる企業は、そうでない企業とどこが違うのか。抜きんでた成果を上げるマネジャーや企業幹部とそれ以外の人たちの違いは、どうして生まれるのか。個人や企業が長期にわたり大きな成果を上げ続けるためには、どうすればいいのか。こうした問いの答えを知りたいと考えていたのだ。
変革とリーダーシップというテーマに関心をもったのは、その延長線上でのことだった。私たちの研究によれば、大きな成果を上げるうえでカギを握る要素のひとつは、変化の速度が増し続ける状況に対処できるかどうかだからだ。
これまで50年近くの間に、ハーバード・ビジネス・スクールの同僚たち、そして近年は、著者が共同で設立したコンサルティング会社コッター・インターナショナル(コッター社)の同僚たちとともに、複数年にまたがる研究プロジェクトを16件以上実施してきた。深く掘り下げて調べた企業や団体の数は600を軽く超えると思う。そのほとんどは営利企業だが、医療機関、教育機関、政府機関、宗教団体、その他の非営利団体でも調査をおこなった。
調査したプロフェッショナルやマネジャー、企業幹部も数知れない。やはりビジネス界の人がほとんどだが、それ以外の分野の人たちも調査対象に含まれている。実際、最初の研究は、1960年代の激動の日々にアメリカの大都市で市長を務めた20人の人たちを対象にしたものだった。
どうやってデータを集めたかは個々の研究によって異なるが、共通しているのは、観察調査やインタビュー調査によって、ケーススタディ的な細かい情報を得ることを重視したという点だ。アンケート調査や、ほかの人たちが作成したデータだけに頼った研究はひとつもない。
こうして集めたデータを定性的に分析し、どのような行動が成功と失敗を生むのかを明らかにすることに力を注いできた。著者たちの取り組みは、変化の速度が増し続ける世界で組織の成功と苦闘を詳細に分析した研究としては最も大規模なものだと自負している。
これらの研究活動に加えて、この10年間は、コッター社のコンサルティング事業の一環として、研究成果をわかりやすい手引きの形にまとめている。顧客がその手引きを実践する様子を観察すると、変化に関する深い理解に基づいた方法論の有効性が見えてきた。
著者たちの助言を採用した企業幹部は、異口同音に「変化が激しい世界で想像を絶する成果を上げることができた」と述べているのだ。ある人はこう語っている。「私たちが成し遂げたことは、ほとんどのスタッフにとって、2~3年前までは思いもよらないものでした」
著者たちの研究成果は、教育機関の教育プログラム、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の論文、講演やブログ、一般の有力メディアなど、さまざまな場で発表してきた。なかでも影響力が大きかったのは書籍だ。著者はこれまで21点の著作を発表し、12点がベストセラーになっている。
『カモメになったペンギン』(ダイヤモンド社)と『企業変革の核心』(日経BP社)は、『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラーリストにも名を連ね、『カモメになったペンギン』は、ドイツで1年間、オランダでは1年以上にわたり、ビジネス書の売上げトップに立った。
13点の著作は、ビジネス書・経営書のさまざまな年間ランキングのトップに輝いた。たとえば、『実行する組織』(ダイヤモンド社)は、『インク』誌、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム、『ストラテジー+ビジネス』誌、英国公認マネジメント協会によって、その年の最優秀書籍に選ばれた。最もよく知られている著作は、1996年の『企業変革力』(日経BP社)かもしれない。この作品は、26の言語に翻訳されており、『タイム』誌により、歴史上最も影響力のある25点の経営書のひとつに選出された。