ハイブリッドと完全リモートの割合が増加し続けるという予想は正しい。その理由は4つある。

 第1に、リモートワーク関連のテクノロジーが進化するのに伴い、リモートワークを実践する人の割合は増加する。1960年代には、オフィスの仕事は完全に紙ベースで行われていて、在宅勤務は不便なことだらけだった。しかし、1980年代になる頃には、PCが普及し始めて、以前よりリモートワークを選択しやすくなった。2000年代には、インターネットと、新たに登場したビデオ会議テクノロジーのおかげで、リモートワークがいっそう容易になった。

 こうした反応は、基本的な経済学の理屈通りだ。つまり、リモートワークの「コスト」が下がれば(たとえば、以前ほど不便でなくなるなど)、それを実践する人が増えるのは、意外なことではない。在宅勤務者の割合は、極めて小さい割合から出発して、新型コロナのパンデミックが始まるまでの半世紀の間、着実に増加してきた。この潮流は今後も続くだろう。パンデミックをきっかけに、リモートでのやり取りをサポートするテクノロジーに関する研究と特許申請の数が大きく跳ね上がっている点も見落とせない。

 第2に、パンデミック以降に誕生した新しいスタートアップ企業は、リモートワークを実践している可能性が高い。そして、こうした若い会社が成長すると、リモートワークが可能な求人の割合も増加すると予想できる。

 第3に、あまり認識されていないかもしれないが、米国はリモートワークに適した環境にある。筆者らが調査した34カ国の中でも、米国はリモートワークの普及率が非常に高い国の一つだ。米国より普及率が高いのは、ニュージーランドとカナダだけである。

 この調査結果は納得がいく。リモートワークは、分権化と個人の自律を示す一つの形といえる。そしてリモートワークは、従業員に対し、働く方法と時間に関する大きな裁量を与える。そのような分権型の意思決定を成功させるためには、経営学の研究によって以前から明らかになっているように、企業は特にうまくマネジメントされていなくてはならない。別の研究によると、米国の企業は平均的に、ほかの国の企業に比べて優れたマネジメント慣行を実践している傾向が明らかになっている。そのような優れたマネジメント慣行が定着しているおかげで、米国企業はよりうまくリモートワークのマネジメントを行うことができるのだ。

 加えて、米国人が他国の人たちより広い家に住んでいるケースが多いことも、リモートワークの普及を後押しする要因になっている。家が広ければ、自宅内に仕事場を確保しやすいからだ。

 第4に、働き手はリモートワークを好んでいる。データによれば、平均すると、働く人たちは、在宅勤務ができることを8%の昇給と同じくらい価値あるものと考えているようだ。リモートワークは、従業員にとって素晴らしい福利厚生制度の一種といってよいだろう。実際、従業員の退職率を引き下げる効果もある。最近実施された大規模な調査によると、リモートワークの効果により、退職率は最大35%下落する場合もあるという。

 では、リモートワークを行うと生産性が落ちるのではないかという懸念については、どのように考えるべきか。研究によると、たしかに完全リモートワークでは出社勤務に比べて、最大10%生産性が低下する。しかし、リモートワークの実施によるコスト削減効果は、生産性低下による損失を埋め合わせて余りある。リモートワークでは、オフィススペースを縮小できるし、どこに住んでいる人でも採用できるようになるからだ。

 一方、ハイブリッドワークの場合の生産性は、職種や一人ひとりの働き手によって、そしてその会社で採用されているマネジメント慣行によって変わってくる。しかし、平均すると、メリットとデメリットの両方を考慮に入れた場合、ハイブリッドワークが生産性に及ぼす影響はほぼゼロと見なせる。もしかすると、生産性を向上させる可能性もある。

 また、ハイブリッドワークは通勤によるコスト(時間と費用の両方)の削減にもつながる。もし働き手が週2日出勤しても、週5日出勤しても同じ量の仕事を完了させられるとすれば、週2日出勤のハイブリッドワークのほうが時間を効率的に使っていることになる。

 企業とそのリーダーたちは、少なくとも週に2日は在宅で仕事をすることの利点を真剣に検討すべきだろう。チームの全員が毎週1日もしくは2日、同じ日に出社して顔を合わせるようにする形でハイブリッドワークを実践すれば、両方の働き方の利点を最大限引き出せるかもしれない。企業にとっては利益が増えるし、働き手も喜ぶ。しかも、エネルギー消費を抑えることにより、地球にも優しい効果をもたらす。

 将来、どれくらいリモートワークが実践されるかはわからないが、オフィス勤務が大々的に再開されるとは考えにくい。リモートワーク関連のテクノロジーは今後ますます向上し、働き手はより柔軟性の高い働き方を選べる企業に引きつけられると予想できるからだ。しかし、オフィスへの出勤再開を推進しようとしてもうまくいかないことを示唆する最も大きな要素は、企業幹部たち自身も内心では、リモートワークの普及がさらに進むと考えていることなのかもしれない。


"Survey: Remote Work Isn't  Going Away - and Executives Know It," HBR.org, August 28, 2023.