実験的な考え方を取り入れる

 物事がうまくいかず、仕事が混沌としていると感じる時、チームや会社が何か新しいことを試す必要があるのは明らかだ。しかし、変化の時期に新しい方向に力をそそぐことは過酷で、リスクを伴う可能性がある。

 そのような場合は、小さな実験やテストラン、パイロットプログラムを積極的に奨励することで、将来に対する従業員の不安を和らげつつ、新鮮なアイデアを生み出せるかもしれない。実際、企業の文化変革を支援するベガファクターの共同創業者であるリンジー・マクレガーとニール・ドシは、米国の労働者9700人を対象とした研究で、実験する権限を与えられた従業員のほうがモチベーションが高いことを明らかにしている。

 筆者のクライアントのショーナは、予測不可能な時期にチームを率いていた。チームと話し合った結果、彼らはあらゆる変化に適応するために、一日の中でさらにゆとりが必要であることがわかった。彼らは、すべてのスケジュールに時間とエネルギーを増やすための以下のような実験についてブレインストーミングをした。

・毎週の定例会議を中止する。
・予定されているすべての会議でカウントダウンタイマーを使い、残り時間が見えるようにする。
・週次リポートを一時的に中止し、それが必要かどうか、頻度を減らせるかどうかをテストする。

 特に小規模で具体的で、時間の制約がある実験は、脳の現在の思考パターンを撹乱させ、チームに好奇心を与え、異なる視点を検討するよう促すため、非生産的な不確実性に陥っている時期に効果的だ。ショーナのチームは、小さな変化が大きな違いを生むことを発見し、驚いた。

 最近では多くの従業員が、自分の仕事に予測できない影響を与える悪いニュースや混乱させるニュースを常に受け取っているように感じている。そう単純ではないとわかっている問題について、リーダーから簡単な概要しか聞かされないと、チームはフラストレーションを感じ、怒りさえ覚える。実際、スタンフォード大学のチェルシー R. ライドとフランシス J. フリンによると、リーダーはコミュニケーション不足のほうがコミュニケーション過剰よりも批判される可能性が9倍に高まることを発見した。

 しかし、上記の原則を使って思慮深くコミュニケーションを取れば、変化や挫折、ストレス要因が次々と訪れる中でも、従業員は自分の懸念を理解し、仕事をよりコントロールできていると感じられる可能性がはるかに高くなる。


"How to Speak Confidently to Your Team During Chaotic Times," HBR.org, August 25, 2023.