組織が混乱している時、部下を適切に導く3つの手法
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サマリー:不確実性が高い時期に、部下にかける適切な言葉を見つけるのは難しい。そこで、黙っている方が安全だと感じるリーダーが多いかもしれないが、それは非生産的である。一方で、よいことだけを話すのも望ましくない。部... もっと見る下たちは賢く、完璧などありえないことを知っているからだ。本稿ではリーダーがみずからの発言に対し自信を持ち、チームに話ができるようになる3つの方法を紹介する。 閉じる

自分の発言に対する考え方を変える

「私たちの組織はいま、ひどく混沌としています」と、ララはエグゼクティブコーチングのセッションで明かした。当時、彼女の会社は新しいCEOを採用したばかりで、変化による影響が組織全体に広がっていた。「チームを集中させ、励まし続けなければなりませんが、私が何を言っても嘘っぽく、気が散ってしまうように思えます。事態が落ち着くまで黙っているべきでしょうか」

 ララのようなマネジャーと話すと、チームに何を言うべきか悩んでいるのは彼女だけではないことがわかる。困難な時期には、部下はより多くのコミュニケーションを必要としているといわれるが、正直な見解を共有すると逆効果になるのではないかと懸念してしまう。

 黙っているほうが安全なアプローチに思えるかもしれない。しかし、それはINSEAD教授であるネイサン・ファーが言うところの「非生産的な不確実性」を生み出すだけで、何も前に進まない。立ち止まって混乱が去るのを待ちたいが、その瞬間は訪れないかもしれないことを私たちは知っている。そこで本稿では、自分の発言についての考え方を変え、何があろうと自信を持ってチームに話ができる方法を3つ紹介する。

「それでも」の力を認識する

 リーダーが活用できる言葉のツールの一つが、「それでも」という単語をより意図的に使うことだ。それにより、異なるように見える2つの考えを一致させることができる。「物事は困難だ。それでも物事はうまくいく」という具合だ。以下に例を挙げよう。

・「私たちは主要なプロジェクトで素晴らしい成果を上げている。『それでも』新しいCOOは、その方向性を変えることを考えている。私たちは引き続き前進することに集中し、必要な時に適応できるよう自分たちの経験を信じていく」
・「マーラが産休のために不在で、チームは苦労している。『それでも』これは、プロセスや要件を再考する機会だ」
・「サプライヤーが予定より1カ月遅れている。そのためプロジェクトYに注意を移すことができる」

 「それでも」を頻繁に使うと、チームに心配させることを恐れて、よいことばかり話すという状況がなくなる。賢明なあなたの部下は、完璧なことなどありえないことを知っており、真実を受け入れるはずだ。

過去を振り返って未来に備える

 ほとんどのビジネスにおいては、過去にこだわらず、素早く前進することが求められている。しかし、チームが、そして会社が成功した時のことを再認識させることで、再び成功できるという根拠を示すことができる。会社やチームの歴史は、あなたが個人的に経験したかどうかにかかわらず、活用することができる。筆者のクライアントが使った例が以下だ。

・「みなさんの多くは新入社員で、前回の不況を覚えていないかもしれません。その時起きた出来事と、私たちがそれをどのように乗り越えたかをお話しします」
・「アンジェラ、あなたは私たちがいま経験しているような、前回の買収の前後やその最中に生じた問題を思い出しているに違いありません。みなさんに少し話してもらえませんか」
・「私はこの会社ではまだ新人ですが、この分野では新人ではありません。もし参考になるなら、私が前回このような変化を経験した時に学んだことをお話しします」

 あなたのチームが新入社員で構成されていたとしても、その仕事が存在する理由や、その仕事が解決する苦労や問題の背景には歴史がある。過去をひも解き、現在につなげることで、未来により確かなものを生み出すことができる。