休暇明けにオーバーワークをしてはいけない
master1305/Getty Images
サマリー:あなたは休暇明けにオーバーワークをしていないか。不在だった時間を取り戻そうと仕事を倍増させたり、仕事のスピードを元に戻すために焦ったりしていないだろうか。アスリートが休息期間を設けるように、労働者にと... もっと見るっても休暇は継続的にパフォーマンスを発揮するために不可欠なものである。本稿では休暇明けのオーバーワークを防ぎ、休暇で得られるメリットを保持する方法を紹介する。 閉じる

休暇明けにオーバーワークしてしまう心理

 夏が終わり、コーチングのクライアントや研究参加者の多くが休暇から戻る中、職場復帰への不安が高まっている。クライアントの一人であるレスリーはこう言った。

「休暇から戻ると、休暇には価値がないように思えます。まるで心理的に時速30マイル(48キロ)から80マイル(128キロ)に加速しなければならないようなものです。受信トレイを処理し、欠席したすべての会議の内容を把握し、そして未対応のクライアントに連絡します。また、私が不在の間カバーしてくれたチームに過度の負担をかけていることに対する罪悪感もあります」

 レスリーのようにこうした強い感情を抱くと、そもそも休暇を奨励しない職場文化においては特に、不在時の自動返信をオフにしたとたんにオーバーワークをし、過度の埋め合わせをし、そして期待値以上の成果を出そうとしがちだ。

 しかし、仕事から離れることによって得られるストレス軽減やパフォーマンス向上といったメリットを損なうことなく日常に戻れる、より健全でバランスの取れた方法がある。

休暇は必要不可欠

 まず明確にしておきたいのは、仕事のストレスをリセットして回復する「ワークリカバリー」と研究者らは呼ぶ)ために定期的に休みを取ることは、「あるとよい」ものではなく、持続的なパフォーマンスと成長のために不可欠なものだ。アスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、けがを避けるために定期的な休息期間を設けて回復するように、労働者も仕事の緊張から回復し、肉体的・精神的エネルギーを取り戻すために、仕事から離れる期間が必要になる。

 研究によると、休息や充電、回復の機会を取らない人は、疲労やモチベーション低下、パフォーマンス低下、バーンアウトのリスクが高い。一方で、定期的にワークリカバリーの期間を設けている人は、よりよい睡眠、高い仕事満足度、高いエンゲージメント、高い仕事のパフォーマンスを享受している。人間の体と脳は慢性的なストレスに耐えられるようにはできておらず、仕事の緊張や要求から離れることでストレスが軽減するだけでなく、生産性と創造性が高まることを示す証拠が数多く存在している。ストレッチをしたり、深呼吸をしたり、新鮮な空気を吸いに外に出たりと、仕事中にちょっとした休憩を取るだけでもストレスのサイクルを止め、ベースラインに戻ることができる。

 休暇のメリットは明らかなのにもかかわらず、米国の労働者の半数近くは、雇用主が提供する有給休暇のすべてを取得してはいない。その主な理由は、仕事で後れを取るのではないか、休みを取ることで出世のチャンスを逃すのではないか、あるいは職を失うリスクが高まるのではないかという懸念や、同僚の仕事が増えることへの罪悪感などである。

 こうした感情はよく耳にするものであり、シニアエグゼクティブのクライアントを含め、彼らは仕事を離れると勢いを失うのではないかという不安を持っている。エグゼクティブコーチとしての筆者らの役割の一つは、定期的なワークリカバリーを実践し、クライアントが自分自身と自分のパフォーマンスに投資できるようにすることだ。

休暇後のオーバーワークの衝動を抑える

 休暇後に、「失われた」時間を取り戻そうとして仕事に投じる労力を倍増させたり、元のスピードを取り戻すために急ごうとしたりするかもしれない。また、チームメンバーが自分の代わりにしてくれていた仕事から離れられるようにする善意の努力や、休暇を取っても自分のコミットメントは高く、組織にとって自分は貴重な存在であることを示したいという気持ちから、オーバーワークをしたくなることもある。

 休暇後のオーバーワークの動機が何であれ、それは極端に行動を変化させることになり、ストレスを増大させ、遅れを取り戻そうとする努力が実際に損なわれることがある。では、どうすればワークリカバリーの恩恵をすべて享受し、焦って仕事に戻るのを防ぐことができるだろうか。以下では、筆者らの研究参加者やクライアントに効果のあった戦略を紹介する。