パフォーマンス思考に切り替える

 高いパフォーマンスと十分なリカバリーは本来別々に機能するものではないが、ビジネス界ではパフォーマンスが過度に強調される一方で、リカバリーは見過ごされがちだ。疲弊して生産性が落ちた後の最終手段や、やることリストが完了した時の特別なごほうびとして休暇を取得するのではなく、トップアスリートを見習い、ワークリカバリーを高いパフォーマンス戦略の不可欠な要素とするのだ。ワークリカバリーは、定期的かつ一貫して実践することで最高の効果を発揮する。

「リエントリーショック」を防ぐ、あるいは和らげる

「リエントリーショック」とは、平穏で安定した状態から、疲弊し消耗するような状態に移行する時に感じる混乱のことだ。そこで、バッファーを設けることでこれを防ぐことができる。休暇を終えてから仕事に戻るまで1日空けると、精神的にも肉体的にも環境の変化に備えることができる。休み明けはスケジュールを軽めにし、環境に再び順応する機会を設けてオーバーワークを避ける。たとえば、あるクライアントは、休み明けの2日間は「会議なし」というバッファーを設けている。

休暇の効果を日常に取り入れる

 リカバリーの期間中、リラックスして自分らしく過ごすのに役立ったものは具体的に何だろうか。運動か、それとも大切な人とのつながりか。ふだんはおろそかになっていた芸術的な活動や趣味だろうか。ただ行き当たりばったりの余暇を楽しむことだろうか。できる限り、こうした活動や条件をふだんの週のルーチンに組み込む。休憩はわずかでも効果があることを、覚えておくべきだ。

休暇明けに新たな依頼を引き受ける前に、断れない理由は何かを考える

 評価されないことや報酬を受けられないこと、昇進できないことを心配しているのだろうか。もしそうなら、立ち止まって呼吸を整え、自分の思い込みを確認する。過剰にコミットしたり健康やウェルビーイングを犠牲にしたりすることなく、自分が求める評価や報酬を得ることは可能かもしれない。問題点が特定できない、あるいは問題点の解決に手助けが必要な場合は、コーチの協力を得ることを検討する。

自分の境界線を見直し、伝え、維持する

 リカバリー期間からの復帰は、自分の仕事の境界線を見直し、新たにする絶好の機会だ。仕事に対応できる時と対応できない時をすべての人に知らせ、自分の役割や快適なレベルを超えて仕事の要求が入り込むようになったら、リーダーシップと相談し責任をシフトするか、委任できるかどうかを確認する。境界線は、あなたの役割に対する周囲の期待を明確にするのに役立ち、周囲の人々があなたの休暇を守り、仕事から精神的に離れることを可能にするものでなければならない。

休暇取得を妨げたり、過剰な労働時間や自己犠牲に報酬を与えたりする有害な職場から離れる

 こうした不健全な職場環境は、疲弊し、バーンアウトに陥りやすくなる。すぐに辞めることができない場合は、退職の計画を立てることから始める。

休暇前にオーバーワークを防ぐ準備をする

 次に休暇を取る時は、未来の自分が楽になるよう事前に準備をする。休暇の数週間前に、不在中に仕事をカバーしてくれる人を決め、その人の連絡先を不在時の自動メッセージに含める。休暇中も連絡を受け付けるのかどうか、またはいつなら受け付けるのかを明確にする。復帰時のルーチンを事前に組み立て、既存のプロセスに組み込むことで、より簡単に仕事モードに戻れるようにする。

 最後に、計画を最終決定する前に、プレモーテム(事前検証)を行うことを考える。具体的にどのような課題や失敗が予想されるか。その主な原因は何か。説明がついていないものは何か。そして、いまできる追加の予防策は何か。このシンプルだが強力なプロセスは、休暇前の計画をさらに洗練させ、たいていの復帰する際に起こる問題を防ぐことができる。

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 定期的に仕事から離れることは、エネルギーと生産性を維持するための最善の方法の一つだ。休暇前にある程度の計画を立て、休暇明けに適切な防止策を設けることで、ワークリカバリーによるストレス軽減の恩恵を余すことなく得ることができる。


"Stop Overworking After Vacation," HBR.org, September 07, 2023.