互換性のあるシステムの構築
アフリカ大陸全域にまたがるデジタルシステムを築くためには、莫大な時間とリソースが必要となる。まずはシステムの互換性を優先させることで、デジタル統合に向けた土台がつくれるだろう。アフリカ諸国で公的なデジタルシステムを築く際は、各国のシステムを互換性があるものにしなくてはならない。要するに、ほかの国々とデータの受け渡しができるようにし、相手国のデータも利用できるようにすべきなのだ。
国や産業によって、デジタル化の進展するペースに差が生じてしまうことはどうしても避けられない。そこで、互換性を意識してシステムを構築することにより、近い将来のデジタル統合を行いやすくするのだ。たとえば、個人認証のシステムであれば、ナイジェリアで獲得したIDをナミビアの銀行で簡単にデジタル認証できるのが理想だ。これは、ナイジェリアの個人認証システムが互換性のあるものであれば実現可能だ。アフリカ大陸全体で互換性のあるIDシステムを構築できれば、アフリカ全土で通用する個人認証システムが実現するだろう。アフリカのどこにいても各国の金融サービスにアクセスできるようになり、アフリカ諸国間の商取引がより容易になるのだ。
言うまでもなく、互換性のある公的なシステムを築くには、本格的な政策変更と規制変更が伴う。各国の政府と地域レベルの団体が主導して、基準のすり合わせや、法的枠組みの強化、サイバーセキュリティと消費者保護、データ保護のための規制導入などを行う必要がある。
電力とインターネットのインフラ整備
アフリカでは人口の一部しかデジタルサービスが利用できない国が多くある。デジタル統合は、そのような中では、けっしてうまくいかない。道路や鉄道、港湾といった物理的なインフラがアフリカの物理的な統合に欠かせないように、電力とインターネットのインフラ整備がデジタル統合の成否を大きく左右する。
アフリカの多くの国では、インターネット利用者が人口の半分に満たない。ブルンジや中央アフリカ共和国においては、その割合が15%を下回っている。インターネットと同様に、アフリカの総人口の43%に相当する6億人は、いまも電力のない生活を送っている。その過半数は、サハラ以南のアフリカ(サブサハラ・アフリカ)で暮らす人々だ。このような状況を考えると、誰もが電力とインターネットを利用できるようにすることが極めて重要なのである。
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アフリカにはデジタル統合が強く求められるが、それが難しい課題であるとよく理解しておいたほうがよい。たとえば、国家の主権が制限されるのではないかという懸念がある。また、国ごとに掲げる目標の違いも障害になりうる。そのため、各国政府の強い関与がなければ、デジタル統合へ向けて積極的な一歩を踏み出すことなどできない。そうした取り組みが実現する前提として、政府がデジタル統合の重要性を理解し、実現のためのリソースを確保する必要があるのだ。
"Accelerating Digital Integration in Africa," HBR.org, September 07, 2023.