2. 活動を測定してしまう
筆者のワークショップでは、マネジャーたちにこの問題を次のように説明する。「今日の私の成果は、自分が使うスライドの枚数で測定するつもりです。さらに、もし私が一日の終わりにとても疲れていたら、自分がよい仕事をしたと自分でわかるはずです。これらを私の成果指標とすることに、みなさんは納得してくれますか」
聴講者たちは必ずノーと言う。「なぜでしょう」と筆者は問う。「それらは成果ではなく、活動を測定する指標だからです」と彼らは言う。「では、成果を決めるのは誰ですか」と筆者は尋ねる。「私たちです」と全員が答える。この瞬間に聴講者たちは「腹落ち」し、その様子が彼らの表情に見て取れる。
解決方法:成果に焦点を当てる
アンジェロは、有名な建設用工具メーカーの国内支社のトップを務めている。自社の事業成果の測定について、彼はこう説明した。「我々は連携して、自分たちが出す結果に焦点を当てます。これまで我々がつくってきたKPIは常に、プロセスに関するものでした」。顧客、サプライヤー、従業員、親会社から成る主要ステークホルダーにもたらす成果に焦点を当てることで、同社はこれまで固定化されていた方法を大きく変えた。
これには、事業とステークホルダー双方に対する成果を測定することが求められる。アンジェロと彼のチームは、ステークホルダーにとっての成果とは何かに関して思い込みを持たないよう注意した。そして主要ステークホルダーに聞き取りを行い、彼らにとって重要な成果が明確になっているかどうかを確認した。この聞き取りによって、アンジェロとチームが考えもしなかった新たなKPIも明らかになった。
3. 焦点の欠如
セバスチャンは、ある地方自治体のCEOを務めている。彼は自治体の戦略計画と連動した業績スコアカードの策定を望んでいた。そこで、地域開発局、環境・計画局、法人サービス局など自身の管轄下にある各局から指標を集め、混合的なリストを作成した。このリストは項目が多く、彼は不満であった。指標の多くは、自治体の目標とまったく関連していないように思われた。
解決方法:指標を混合するのではなく、階層化する
ヘレンは、非常に学費が高い大手名門の私立女子校で新たに校長に就任した。彼女は同校のスコアカードを策定するために、科学や英語、数学など諸学科から指標を集めた。しかしセバスチャンのケースと同様に、一連の混合的なKPIは、同校の成果指標として機能しなかった。
KPIの策定をやり直すことで、彼女は問題を解決した。今回は指標をボトムアップで集めて混合するのではなく、上から下へと段階的に細分化していくという逆の順序でKPIを策定した。
このプロセスについて、彼女はこう語る。「一石二鳥でした。一連のKPIで足りない部分が明らかになり、生徒、保護者、教師・スタッフ、政府、コミュニティを中心とする学校の戦略計画とKPIとの間に整合性がもたらされました。さらに、これらのグループへの成果に基づく効果的なスコアカードも作成できました」
ヘレンは「分析レベル」という、成果測定における基本概念を学んだのだ。あるレベルに適用される指標(例:全社レベルでの収益)は、別のレベル(例:人事部など社内の一部門)には適用されない。同様に、部門レベルに適した指標は、全社レベルでは適切ではない。
* * *
戦略計画とKPIの両方に一貫した枠組みを適用しなければ、乖離が生じやすい。もしあなたにもこうした経験があれば、それはまったく珍しいことではない。
この乖離を埋める際に忘れてはならないのは、成果測定とは基本的に、組織と主要ステークホルダーとの関係を測定することである、という点だ。したがってKPIは、組織が考える「やるべきこと」ではなく、主要ステークホルダーが組織に何を期待しているのかに基づいて形成される必要がある。
"Avoid These Pitfalls When Measuring Your Strategy's Performance," HBR.org, September 04, 2023.