エグゼクティブが転職する時、人脈をどう活用すべきか
Martin Barraud/Getty Images
サマリー:エグゼクティブは転職する時、人脈を活用することが極めて重要になる。しかし、どのように人脈をつくり、活用すべきかを理解しているエグゼクティブは多くない。本稿では、エグゼクティブが転職時の人脈づくりで直面... もっと見るしがちな6つのハードルを紹介し、それらを乗り越えるための方法を紹介する。 閉じる

人脈を活用できずに終わる6つの場面

 インターネット上には、職探しを目的とした人脈づくりの難しさについて書かれた記事が無数にある。だがどれも、比較的若いプロフェッショナルが上位レベルの人と人脈を築く方法についてのアドバイスばかりである。

 人脈づくりにおいては、上級エグゼクティブも程度の違いこそあれ、同じように厳しいハードルに直面する。それにもかかわらず、上級エグゼクティブに向けたアドバイスは、驚くほど少ない。これは問題である。なぜなら、人脈づくりのメリットを最大限活用する方法を知ることは、ピラミッドの頂点に立つCEOの離職率がかつてないほど高い昨今、極めて重要な事項だからだ。

 筆者らは数十年にわたり、転職する上級エグゼクティブと関わり、研究してきた。本稿では、上級エグゼクティブが転職時の人脈づくりで直面しがちな6つのハードルを特定し、それらを乗り越えるためのガイダンスを提供したい。

1. 助けを求めることを嫌う

 次の職を求めて人脈を構築することはつまり、人に助けを求めることである。社会心理学の研究によると、高い地位にある人は、力があり有能であるというイメージを保つべきというプレッシャーを感じやすく、同時に自助努力を重んじる傾向があるという。どちらも、助けを求めることに二の足を踏む要因になる。拒絶されることを恐れ、助けを求めることが弱みをさらし、自分の地位やポジション、評判に傷をつけるのではないかと不安を覚えるのである。これはエゴに由来するためらいであり、よく見かけるものだ。筆者の一人、イバーラのあるクライアントはこう言った。「私は助けを提供する側であり、求める側ではありません」

 これを克服するごく自然な方法は、まずリスクの低い(得られる利益が少ない)相手に連絡を取り、そこから人脈づくりを始めることである。理想としては、あなたがよく知っているエグゼクティブで、人脈づくりをした経験があり、どのようにして人に助けを求めたか、そしてそれによって何を得たかを話してくれる人がよい。

 おそらく、あなたが思っている以上に多くの人々に助けを求めることができるだろう。スタンフォード大学の社会心理学者スアン・ザオは、人はたいてい、誰かを助けたいという他人の思いを過小評価していると指摘する。それは、人を助けることが大きな満足感をもたらすと理解していないからだという。低リスクのウォーミングアップとリハーサル(本稿の共著者のルラークの言葉を借りれば「恐れていた言葉が自分の口から出るのを聞く」こと)によって、伝えるべきメッセージを微調整し、感情を落ち着かせ、成功につなげることができる。肯定的な体験を何度か重ねると、よりハードルの高い電話をかけたりメールを送ったりするのが楽になるだろう。

2. 秘密を優先する

 より上級のエグゼクティブになるほど、特に解雇された場合は秘密にしたがる。ルラークのクライアントの一人はこう聞いてきた。「どうすれば職を探していることを知られずに、求人市場に入れるでしょうか。人と連絡を取りたいのですが、転職に関心があることは知られたくないのです」

 こうした心配が勝ると会う人をみずから制限してしまう。それ自体が問題である。また人脈づくりと転職に取り組みながら、それを隠さなくてはならなくなる。イバーラの研究によると、人脈づくりと転職のプロセスは、予想よりもはるかに時間がかかることが多い。長期間、秘密という重荷を抱えることで、大きな心理的代償を払うことになりかねない。

 他者との接触を制限することがとりわけ有害なのは、視野を広げて次にやりたいことを幅広く探求する妨げになる場合だ。また、曖昧にしてごまかそうとしても、たいてい人はごまかし切れない。上級エグゼクティブの世界は狭い。あなたと話した人々は、おそらく自分の人脈内の情報源に電話したりネットで検索したりするだけで、あなたの目論見を見破ってしまうだろう。たとえ自分の状況を隠し通せたとしても、神経をすり減らし、膨大なエネルギーを吸い取られる。実情を正直に直接的に話しても、結果は同じかもしれないのだ。ほとんどの場合、正直であることが最善の策となる。