新たな「マネジメントの筋肉」の増強に投資する
仕事のニーズ、従業員のニーズ、仕事の達成方法という3つの要素を調整する取り組みは、現場でチームとともに働くマネジャーを起点に行われる必要がある。彼らは仕事と従業員のニーズ、および仕事がどう達成されるのかを間近で理解している。
ただし、この調整には2つの新たな「マネジメントの筋肉」が必要となる。
一つは、仕事がオフィスで行われるのが普通だったコロナ禍以前、そしてオフィス勤務者の多くにとってリモートワークが主流だったコロナ禍の最中には、必要なかったものだ。現在のマネジャーは、仕事をどこで、いつ、どのように達成すべきかに関するチームでの議論を促進して調整する必要がある。毎週振り返りの機会を設け、何が有効だったか、何が効果的でなかったのか、来週の働き方で何を変えるべきかについて話し合おう。
分散型チームでの仕事は珍しくないため、2つ目の筋肉は間違いなくコロナ禍以前にも必要だったものだ。マネジャーは、つながりと文化を築く能力を鍛えるとともに、分散しているハイブリッド型のチーム全体を育成し、鼓舞し、メンタリングとコーチングを行う能力を身につける必要がある。
さらに、従業員の感情面のニーズと機能面のニーズにも対応しなければならない。先頃BCGが9カ国で実施した、職場でのリーダーシップに対する従業員の期待に関する調査では、優れたリーダーを特徴づける性質が明らかになった。そのうち上位4つは、正当な評価を行う、従業員のコーチングと能力開発を行う、共感を持って聞く、従業員のことを気にかける、である。
これらの新たなマネジメントの筋肉を鍛えるには努力が必要だが、ふさわしい見返りがある。パフォーマンスの向上、エンゲージメントの向上、定着率の向上などはそのごく一部だ。あらゆる筋肉と同様に、鍛えるためには時間を費やして訓練しなくてはならない。
だが、すべての組織は前向きな取り組みを内部で始めることができる。自社の最も優れたマネジャー、つまり、すでにこれらの一部を実践している人を特定するのだ。彼らを際立たせている具体的な習慣と振る舞いを見極め、「最も優れた者が、残りの人々に教える」という方法で、同様の能力を伸ばす方法を他者が学べるよう後押しするとよい。これは単純な訓練を超えて、日々新たな働き方を教え、コーチングを行い、手本を示し、見返りを与える取り組みである。
要するに、リーダーはトップダウンで命令を発し、それを強制するよう現場のマネジャーに求めてはならない。従業員のニーズと仕事のニーズ、および自由に使えるデジタルと生成AIのツールに最も適した働き方を、チームと共同で設計できるようマネジャーに権限を与えて後押しすべきなのだ。
大勢に追従し、一律にオフィス復帰の方針を発令するほうが簡単かもしれない。だが、本稿で挙げた4つの分野に基づいて思慮深く改革を行うことは、潜在的に有益なだけではない。それはまもなく、仕事と人材の優位性を将来にわたって築き維持したい企業にとって不可欠となるだろう。
"Does Your Hybrid Strategy Need to Change?" HBR.org, October 02, 2023.