的外れなオフィス回帰論に時間を費やしていないか
Illustration by Beatrice Caciotti
サマリー:企業が従業員にオフィスへの復帰を一律で迫る動きが盛んになっている。しかし、その多くは的外れである。なぜなら、画一的な義務化は、従業員の反発を招くだけでなく、彼らが能力を発揮するのを阻害しかねないからだ... もっと見る。本稿では、経営陣が注力すべき、すべての人にとって仕事をより働きやすい形にする4つの取り組みを紹介する。 閉じる

オフィス回帰論は的外れなままである

 2023年秋、企業は再び従業員にオフィスへの復帰を迫り、対面で協働すべき日数について議論を続けている。

 この議論はずっと的外れなままである。

 画一的な義務化が奏功するのは、「均質な従業員基盤」によって「一つの共通のタスク」が遂行されている場合に限られる。どちらもありえないことは、当然ながら誰もが知っている。

 CEOは従業員を脅すのではなく、マネジャー(特に現場の担当者)がチームの仕事、チームメンバーの働き方、その仕事を達成する最善の方法について深く詳細に理解できるよう、彼らに権限を与え、後押しすべきである。さらに、これらの要素すべてに変化をもたらすであろう生成AI(人工知能)の影響も考慮しなくてはならない。

 筆者らによる研究、企業リーダーとの協働経験、および世界各地の労働者に関する調査は、これらの要素を考慮することがすべての人たちにとってよりよい結果につながることを示している。

企業は岐路に立っている

 CEOの気持ちも理解できる。リーダーは、オフィスの稼働率が記録的に低いにもかかわらず賃料の支払いを正当化しなければならず、ホールに人が誰もいない職場で協働の文化を築かなければならない。「静かな退職」や「静かな人員削減」(解雇ではなく配置転換による人員整理)、オフィス街の活気を取り戻せという当局からの圧力、生成AIの影響への対処などに彼らは必死で取り組んでいる。

 だが、こうした圧力への解決策は、オフィス復帰を義務化し、対面での勤務時間を業績管理ツールとして使うことではない。たとえば、従業員のIDバッジのデータを監視して出欠を業績評価に含めるような方針は、大きな反発を招いている。

 オンライン滞在時間の監視も、同様に効果がない。デスクワーカーと経営幹部1万8149人を対象にスラックが最近実施したアンケート調査では、勤務時間のうち仕事の遂行に費やされた時間は32%にすぎず、回答者の63%は仕事をしていない時にもオンラインでアクティブ状態を維持しようと努めていた。

 出社やオンラインでのアクティブな時間を生産性に結びつけたがる傾向は、より大きな問題から生じる兆候の一つである。今日のリーダーの多くは、自分たちが育ってきた経験とは根本的に異なる働き方を受け入れるのに苦労しているのだ。

 オフィスに通勤して9時から5時まで働くのが当たり前の文化の中で、彼らは自分の能力を証明してきた。そこでは柔軟な働き方を試みる人は、主流から外された。産休後に復職して出世コースから外される「マミートラック」の女性などである。

 最も成功している組織であれば、次のことに気づくはずだ。トップダウンによる厳格な義務化を行うには、実情があまりに複雑であること。そして仕事、チーム、顧客と直接向き合うマネジャーに、適切なスキルとツールを与えて権限を委ねれば、彼らが働き方に関する判断を行う最適任者になることである。

 CEOと経営陣は次の4つの取り組みに注力することで、すべての人にとって仕事をより働きやすい形にできる。