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流行りのスキルを学ぶだけでは効果がない
ディスラプションの時代において、成功が見込める唯一の戦略は適応することであり、今日ほどそれが確かな時代はない。一世代前は、スキルの価値の半減期は約26年だったが、現在ではたいてい5年未満だ。そのため、2023年に企業が学習と人材開発のプログラムに推計3800億ドル超を投じると予測されているのも、驚くべきことではないだろう。
しかし、私たちはさらにうまく学習を進める必要がある。何十年にもわたる試行錯誤の結果、リーン生産方式、アジャイル開発、無意識バイアスの克服などに関連するスキルは、ほとんどの組織で習得が進んでいないことがわかっている。実際、マッキンゼー・アンド・カンパニーの最近のリポートは、調査対象となった企業の87%で今後5年間にスキルギャップが生じると予測している。
研修を増やしても解決はしない。その時に流行しているスキルに焦点を当てたワークショップに従業員を参加させれば結果が出るというものではない。必要不可欠なのは、首尾一貫したスキルベースの戦略を構築することだ。将来の課題に対応するために必要なスキルベースの組織をつくるには、具体的にどのスキルをターゲットにするのか、誰がそれを学ばなければならないのか、どのような教育や経験、体験を組み合わせるのが効果的なのかを真剣に考えなければならない。
たとえば、本稿の筆者の一人であるマクリースがエグゼクティブバイスプレジデントを務めていたソフトウェア会社のピーケーウェアでは、特定のプロセスに沿ったチームの調整に重点を置いたセールストレーニングに売上げの1%以上を投資していた。従業員は教育を受けたが、当初の改善を維持するのに必要な指導やリアルタイムのコーチングを一貫して受けられなかったため、期待された効果は得られなかった。
それに対し、筆者のバドゥリがチーフ・ラーニング・オフィサーを務めていたウィプロでは、保険部門のリーダーがストーリーテリングという特定のスキルのトレーニングを受けた。彼らは文学に関するイベントに出席し、3日間にわたってプロのストーリーテラーに接した。体系的なワークショップにも毎晩参加し、観察したことを整理するのに役立った。オフィスに戻った後も、ピアメンタリングを長期間受け、今度は自分たちのチームにストーリーテリングのトレーニングをするよう奨励された。これはスキルの普及に役立っただけでなく、リーダーがほかのメンバーに教えることで、自身の習熟度を深める機会にもなった。その結果、契約の獲得が飛躍的に向上し、収益が大幅に伸びた。
長年にわたり専門知識の研究に取り組んだ心理学者の故アンダース・エリクソンは、ワールドクラスのパフォーマーを育てるには、意図的な実践が重要だと指摘した。指導だけでは不十分で、スキルを実践し、改善点を特定し、コーチングを受ける必要がある。パフォーマンスを向上させるのは、そうした教育、経験、体験の組み合わせなのだ。
「70対20対10」の学習モデル
組織が未来にわたって勝ち抜くため、従業員に対してどのように必要なスキルを身につけさせるべきか。筆者らが勧めるのは、教育、経験、体験を組み込んだ「70対20対10」の学習モデルだ。その仕組みを以下で説明しよう。