10% 正式な指導(教育):ここに含まれるのは、ウィプロの幹部が夜間に参加したストーリーテリングのワークショップのような、体系的な教育経験だ。ほかにも、特定のスキルに焦点を当てたウェビナーや対面の講座が該当する。

20% 社会的学習(体験):社会的学習は他者から学ぶことであり、ウィプロの例では、プロのストーリーテラーが果たした役割だ。メンタリング、コーチング、ピアツーピアの交流なども含まれる。たとえば、組織内にメンターシッププログラムを設けることで、従業員は経験豊富な同僚から学べる。また、定期的なチームビルディングの活動も、継続的に学習する文化を育み、スキル向上に役立つ。

70% ワークフローの中での学習(経験):これは学習戦略の最も重要な部分で、実際の経験やタスクを通じて、仕事の中で学習することだ。たとえば、従業員は複雑なプロジェクトに取り組むことで、問題解決能力を向上させることができる。定期的なフィードバックは、従業員が自分のパフォーマンスを振り返り、改善点を特定するのに役立つ。ストーリーテリングのワークショップでは、参加者は同僚に継続して教え、ビジネスピッチやレビューに応用することで、そのスキルを深める貴重な実地体験を得られた。

 これは、ジャック・ウェルチがCEOを務めていた時代のゼネラル・エレクトリック(GE)がクロトンビル研究所で行っていたような、MBAスタイルの座学に主眼を置いた従来の企業学習のアプローチとは大きく異なる。70対20対10の学習モデルを成功させるために、マネジャーは部下を指導してパフォーマンスを向上させるという監督者としてではなく、コーチとして積極的な役割を果たす必要がある。同時に、L&D部門は、単にカリキュラムを提供するだけでなく、リーダーと密接に協力し、個人に合った学習環境をデザインしなければならない。学習は、包括的かつ継続的、協働的であるべきだ。

 たとえば、米テキサス州アマリロを拠点とするBOC銀行は同州パンハンドル地域を活性化させる取り組みの一環として、マネジャーが業績評価者としての役割からスキルアップコーチとしての役割に移行できるよう支援した。L&Dチームは、既存の学習計画から着手するのではなく、まずリーダーとパフォーマンス向上のための課題を特定した。

 次に、それらの課題を個々の従業員が学ぶべきスキルに分類し、L&Dチームは、マネジャーが70対20対10のモデルを利用し、パーソナライズされた学習計画を通じて部下を指導するのを支援した。すると、9カ月も経たないうちに会社の標準的なビジネス指標において、大きな結果が出始めた。同行CEOのアレックス・オブライエンは、「70対20対10モデルの採用は、私たちのイノベーションの能力を直接促進し、銀行業界で差別化できるコアソフトウェアの構築を可能にしています」と述べている。

 将来にわたって競争を勝ち抜くには、「人材獲得戦争」という考え方から、スキルベースの考え方にシフトする必要がある。人材は、企業が呼び寄せたり勝ち取ったりすることのできる元からある資産ではなく、構築する必要があるものだ。いずれにせよ、将来役立つ最も重要なスキルはまだ存在しない。ベンチャーキャピタリストが企業のポートフォリオに投資し、管理するのと同じように、企業のリーダーはスキルのポートフォリオを追求し、使わなくなったものを手放す一方で、成果を上げ始めたものを強化する必要がある。

 仕事の未来は、テクノロジーによって決まるのではない。従業員のスキルを開発し、それを実践し、より生産性の高い職場と経済を生み出すために必要な教育、経験、体験を適切に組み合わせることによって決まるのだ。


"Help Your Employees Develop the Skills They Really Need," HBR.org, October 06, 2023.