自分の行動に注目する
悲観主義の原因が何であれ、自分の行動を変えることは、長年の信念や価値観を改めようとするよりもずっと簡単である。一般的に悲観主義が現れるのは次の3つだ。
考え方(ネガティブな出来事や結果は避けられないと考える)、主体感(状況の結果に影響を与えることができると感じるかどうか)、行動(不平を言ったり、他人の考えをおとしめたりすることなど)である。特に予防焦点型の人は、「考え方」を変えることはできないかもしれないが、自分に「主体性」があるということを認識してほしい。そして、自分のネガティブさが他の人に伝染しないように「行動」を変えるという選択をすることができる。
ほかの人が気づかないマイナス面を気づくたびに、言いたいことを我慢する必要はないが、さらに建設的な意見の伝え方を探す。「これはけっしてうまくいかない」ではなく、「このアプローチにはいくつかのリスクがあると思うので、それを共有して議論したい」などと伝える。
自分の行動を検証することは、自分の悲観主義がいつチームに利益をもたらし、いつ害を及ぼすかを自問することでもある。あなたが見解を述べると、人々が口を閉ざし始めるだろうか。あるいは、人々はあなたを避けることがあるだろうか。どのような時に、彼らはあなたに好意的な反応を示すだろう。また、自分の考え方にあなた自身がどう感じているかも考える。それはあなたの役に立っているか、それとも息苦しさを与えているだろうか。
欠点を知る
先述したように、悲観主義にはプラスの面もある可能性があるが、研究によると、否定的な態度の人は、楽観的な態度の人よりも苦労する可能性が高い。幸福と成功を主に研究し、それゆえ悲観主義にも注目しているミシェル・ギランによると、悲観主義者は楽観主義者よりもバーンアウトする可能性が5倍に高まるという。また、仕事に熱心に取り組んだり、同僚や上司と強力な人間関係を築いたりする傾向も低い。このデータはあなたの経験とは一致しないかもしれないが、職場でさらに前向きな態度を取れば、あなたにとって有利になる可能性があり、周囲の人々も確実に楽になることを覚えておくべきだ。
反応を変える
悲観主義者に起きることの一つは、どのような時でも否定的な人だと決めつけられてしまうことだ。言い換えれば、人々はあなたの言動すべてを「悲観主義者だ」というレンズを通して見るようになる。その結果、あなたの考えやアイデアが、たとえそれが正当なものであっても、否定されてしまう。
また、あなたの見解を強く推しすぎると、相手はポジティブさをいっそう強めるかもしれない。それよりも、相手のモチベーションのスタイルを尊重し、相手の視点の正しいところを認める。自分も楽観的な感情や考えを持っていることを認めたうえで、相手の見解、あるいはそれにあなたが同意する側面を肯定することが役に立つ。本心でないなら「あなたの言う通り、このプロジェクトは素晴らしい成功を収めるだろう」と言う必要はない。「あなたの意見を聞き、これが成功するかもしれないとも思う。障害になる得るものは何か、どうすればそのリスクを軽減できるか、話し合おう」と言うことができる。
全体として、自分がどれくらいの頻度でネガティブになるかに注意し、(心から)ポジティブなコメントを述べたり、楽観的な同僚に同意したりできる瞬間を見つけるようする。そうすることで、払拭できないくらい悲観主義者であることが周囲に浸透してしまうことを防ぐことができる。
発散の場を見つける
職場で笑顔を装い、否定的なことをいっさい言わないことが答えだとは思ってほしくない。本当の自分や感情を押し殺すことが有害な結果をもたらすという証拠は豊富にある。それよりも、自分のネガティブさを発散できる場を見つけるようにする。プライベートで感情を吐き出せる同僚や友人がいれば、公の場でポジティブになりやすくなる。こうした役割を担ってくれる人がいない場合は、自分の考えを書き留めることもできる。心配事や不平不満を文章にし、それを捨て去ることで、不安が解消され、より前向きな行動になる余地ができるはずだ。
仕事に対する多くのアプローチと同様、悲観主義にも望ましい時と場所がある。リーダーが皮肉屋の意見に耳を傾けていれば、避けられたかもしれない企業の不祥事の数々を思い浮かべてほしい。しかし、人々の気分に水を差すことは歓迎されることではない。重要なのは、あなたが権力を持ち、そして同僚と健全な関係を築けるように、悲観主義を適度に抑える方法を見つけることだ。
"Are You the Pessimist on Your Team?" HBR.org, October 23, 2023.