ジェンダー

 エグゼクティブの間での男女の賃金格差は、多くの研究の対象となっている。業界や部門、地域、職務上の役割、企業特性などの説明変数を考慮したうえで、今回のエグゼクティブのサンプルで測定したところ、6.5~8.5%の範囲で依然として格差が存在している。

 筆者たちの先行研究は、転職は女性がこうした格差をさらに縮めるためのメカニズムとなる可能性を示している。転職に伴う賃金差を調査したところ、女性は男性より昇給の幅が大きかった。そこで、ここでもDPPが、女性が地位を確立する手段になるのではないかと考えた。

 実際に筆者たちの研究結果もこれが事実であることを示唆している。DPPがジュニアエグゼクティブにもたらす報酬アップの効果は、女性のサンプルではさらに高くなっている。女性の場合、DPPの標準偏差1の違いは8.8%の報酬増に相当する。男性の場合、DPPの効果は3.1%にすぎず、報酬増の測定方法としての精度は低い。

 これらの結果から、プロフィールの可視性の低さが報酬にネガティブな影響をもたらすということは、女性にとって何か対処できる機会になりうるかもしれない。専門的な資格で地歩を固めるだけでなく、自分のプロフィールをデジタルにおいて目を引きやすく伝えることも、賃金の男女格差を縮めるための測定可能な要因になるようだ。

人種

 エグゼクティブのサンプルを北米地域に限定すると、個人の資格や職務、業界、部門、企業属性を調整したうえで、白人以外のエグゼクティブは白人の同僚より報酬が26.8%低い。しかし、DPPの充実はこの差を軽減する効果が見られた。DPPが1標準偏差上昇すると、非白人のエグゼクティブの報酬は7.9%増えるのだ。

 この効果の範囲は、女性エグゼクティブの場合より広く、サンプルの役職の全範囲に及ぶ。人種の影響はジュニアとシニアエグゼクティブの両方に及ぶと考えられる。

地理的条件

 今回の研究は、リンクトインのプロフィールのデータを指標として用いたため、地域の影響も測定することが重要になるだろう。北米、南米、アジアでは、プロフィールの充実のレベルが1標準偏差、高くなると、報酬はそれぞれ2.9%、21.2%、6.6%増えている。一方、欧州とオーストラリア、ニュージーランドでは、測定可能な正の効果は見られなかった。

 これはリンクトインが最も広く使われている地域と関係があるかもしれない。2022年においてリンクトインの利用者の規模が最も大きかったのは、米国やインド、ブラジル、中国だった。当然ながら、プロフィールの可視性は、プラットフォーム上での情報の開示量だけでなく、プラットフォームがどのくらい利用されているかにも影響を受けている。

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 デジタルプレゼンスは、他者が自分をどのように認識するかに影響を与える。簡潔な履歴書と推薦状のリストだけでは、プロフェッショナルとしての能力の本質をとらえることはできない。今回の調査でわかったように、オンライン上の人格を意図的に管理することは、報酬との間にポジティブで測定可能な関係を持つことを示している。これは現在の雇用主に好印象を与えるだけでなく、将来の雇用主になるかもしれない人々の関心を惹きつけ、人的資本を存分に活用して成果を得られる可能性を秘めているのだ。


"Research: Can a More Detailed LinkedIn Profile Boost Your Salary?" HBR.org, October 31, 2023.