ペットと職場で一緒に働くことの驚くべき効用
HBR Staff/Klaus Vedfelt/Getty Images
サマリー:現在、多くの企業が対面型とハイブリッド型の仕事のあるべき姿を模索している。新たな働き方のアイデアとして筆者らが挙げるのが、ペットをオフィスに迎え入れることだ。ペットがいると職場のウェルビーイングが高ま... もっと見るったり、コラボレーションが促進したりするという研究結果もある。しかし、実際にオフィスにペットを迎え入れることには課題もある。 閉じる

ペットをオフィスに迎え入れる効果

 管理職や企業リーダーは現在、対面型とハイブリッド型の仕事のあるべき形を模索し、オフィスをできるだけ来たくなるような場所に、そしてオフィスにいる時間をできるだけ共同作業の時間にしようとしている。いつ、どこで、どのように仕事をすべきかを考えているいまこそ、常識に囚われないアイデアを検討する絶好のタイミングである。

 あなたがまだ考えたことのないアイデアを一つ提案しよう。ペットに関する社内規定、ペットポリシーの策定だ。筆者らが同僚であるユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのカリサ・ラムとシンガポール国立大学のカイ・チー・ヤムとともに最近『ジャーナル・オブ・マネジメント』誌に発表した論文をベースに、本稿では、4本足の相棒をオフィスに迎え入れることを、競争優位性の一つとして、エビデンスに基づいて推奨したい。

「ペットフレンドリーなオフィス」を採用やリテンションのツールにする

 現在、米国の家庭の66%がペットとともに暮らしている。ミレニアル世代とZ世代では、その割合はさらに高い。ほぼ5世帯に1世帯が、新型コロナウイルス感染症による行動規制期間中にペットを迎えた。この3年の間で、従業員は、ペットと寄り添いながらのズームミーティングをしたり、昼下がりの散歩に出かけたりと、仕事を喜んで行うようになった。

 従業員に対し、ペットと過ごすか、オフィス復帰するかのどちらかを選ぶように迫れば、結果は好ましくないものになるだろう。ある研究では、自分のペットとの絆が非常に深い動物看護師に、ペットと離れるように強要したところ、彼らの間に強い罪悪感と仕事への不満が見られた。

 実際、1日の計画だけでなく、キャリアについても、ペットのことを考えて決める従業員が増えているという調査結果もある。人気動物サイト「ザ・ドードー」(The Dodo)に投稿された次のような告白が、ディスカッションフォーラムに多数掲載されている。「コディと過ごす時間を増やすためにシカゴでのフルタイムの仕事を辞めましたが、後悔はしていません」

 それに対し、ペットを受け入れることには目に見えるメリットがある。一般的なオフィスのほか、大学、刑務所、病院、裁判所など、さまざまな環境において、動物の存在が従業員のコミットメントやキャリア満足度を高め、離職率を低下させることが研究によって示されている。

 こうしたプラスの効果は、ペットを飼っていない従業員や、職場で動物と積極的に交流しない従業員にもある。なぜかというと、ペットに配慮した規定は、企業が従業員のウェルビーイングを優先している証だと見なされるからだ。そのため、求職者もペットに優しい職場を好む。ペットの受け入れは、企業がオフィスに呼び戻したい従業員を惹きつけ、つなぎ留めるのに役立つのである。

ペットがいると職場のウェルビーイングが高まる

 学術調査でも米国の全国調査でも、大多数の従業員が、ペットがいると、より和やかで交流の多い職場環境になると回答している。彼らは、何かに気づいているのだ。筆者らの分析したさまざまな研究でも、動物がいるだけで従業員は安らぎを得て、ストレスが軽減され、仕事へのエンゲージメントが高まり、ワークライフの質が向上するという結果が出ている。

 たとえば、ある研究では、病院にファシリティドッグ(医療施設などに常勤するセラピードッグ)がいることと、従業員の達成感、前向きな勤務態度、精神的健康の向上との間に関連性が見られた。

ペットがいるとコラボレーションが促進される

 筆者らのチームにとって最も驚きだったのは、ペットが社会的な潤滑油として機能し、コラボレーションを促進すると示す証拠が増えていることである。従業員へのインタビューによると、ペットがいることで、職場のコミュニケーションや情報共有が円滑になり、同僚との絆や友情が深まっているという。これは、ペットが従業員間の交流を増やし、孤立感を軽減し、実りある会話のきっかけとなるからだと考えられる。犬を撫でようと同僚のデスクに立ち寄ったが、気づいたら同僚とのおしゃべりに花が咲いていた、という経験のある人なら納得だろう。

 心理学者が行ったある実験では、犬と一緒に意思決定タスクに取り組んだ参加者らは、(犬のいないチームに比べ)自分たちのチームを友好的で、互いの意見を傾聴し、それによって協力関係や信頼関係が向上したと高く評価した。

 コンパニオンアニマルは、慢性的な健康問題や障害、精神的な問題を抱える従業員にとって特に重要な役割を果たし、独断偏見のない友として、社会的交流の機会を広げ、自立心を高める。余談だが、これはサービスアニマルにも(それ以上に)当てはまることであり、サービスアニマル(日本の身体障害者補助犬など)はもちろんそれに関する法律もある。要するに、ペットの受け入れによって、オフィス内の交流や包摂性を高めることができ、それらは創造的なコラボレーションを促進する重要な要件なのである。