
ビジネスリーダーの多くには、従業員をオフィスに戻したいという強い気持ちがある。しかしながら、従業員はオフィスに戻るべき説得力のある理由を求めている。オフィスに集まることで従業員が何を得られるようにするべきか。マイクロソフトの最新調査によると、「人とのつながり」にそのヒントがある。本稿では、マイクロソフトのCMO(最高マーケティング責任者)がオフィスに関する最新の調査結果を提示しながら、従業員とのつながりを取り戻すために、リーダーが実施すべき3つの取り組みを紹介する。
仕事は行うものであり、行くところではない
世界中でレストランやコンサート、旅行に人々の姿が戻ってきた一方で、多くの人々が戻ろうとしない場所がある。それがオフィスだ。
数多くのビジネスリーダーは失望している。彼らは週5日、
今日のハイブリッドな世界において、「仕事」というものは人々が「行うもの」であり、「行くところ」ではなない。2019年に戻ることはないのだから、働く人も企業も、いまこそオフィスの役割を見直すべきである。
権限を与えられ、やる気のあふれる従業員が競争優位をもたらすことは明らかである。ただし、これまでのところ、ハイブリッドな世界でオフィスがどのように従業員をサポートし、エンゲージメントを高めるのかについて、ビジネスリーダーはその答えよりも多くの疑問を抱えている。
マイクロソフトの最新の調査によると、疑問への答えは、すべてのリーダーにとって最重要課題であると考えられていること、つまり従業員との「つながりを取り戻すこと」(リコネクティング)にある。
オフィスの価値は場所ではなく人にある
ビジネス意思決定者(BDM)の間では、人々をオフィスに戻したいという強い思いが間違いなく存在する。最新のMicrosoft Work Trend Index(マイクロソフトが全社で実施している働き方に関する年次調査報告書)によれば、BDMの82%が「オフィスに戻って対面で仕事をすることに関心がある」と回答した。
しかし、通勤時間がゼロになり、ワークライフバランスをより効果的に管理できるようになった2年間を経験したいま、従業員は「なぜあえてオフィスに戻らなければならないのか」という疑問を持っており、説得力のある理由を企業に求めている。実際、従業員の73%が「会社が求めるからと言うだけでは納得できず、それなりの理由が必要だ」と感じている。そこで問題なのは、オフィスに戻る説得力のある理由は何か、なのだ。
それに対する答えは簡単だ──人は人に関心があるのだから。
調査によると、オフィスに出勤する動機について、従業員の答えは明快だった。すなわち、同僚と交流するためであり、次のように回答している。
・従業員の85%は「チームの絆を強めるために出社しよう」と思っている。
・従業員の84%は「同僚と交流できるなら出社しよう」と思っている。
・従業員の74%は「仕事仲間」がオフィスにいるとわかれば、より頻繁に出社する。
・従業員の73%は、直属の部下がオフィスにいるとわかれば、より頻繁に出社する。
2022年春、筆者はパンデミック以降、初めてとなる出張で英国とドイツを訪れ、この「つながりの力」を実感した。1週間かけて現地の従業員や顧客、クリエイター、学生たちと会って、大きなエネルギーをもらった。恋しかったのは、オフィスという物理的な場所ではなく、オフィスにいる人たちだと再認識した。
そのように感じているのが筆者だけでないことは、データからも明らかだ。従業員の約半分が「直属のグループ以外の人間関係が希薄になった」と答え、40%以上が「会社全体から切り離されたように感じている」という。
これからの1年で、人々が再びつながりを取り戻す機会を確保することが極めて重要になるだろう。さらに、パンデミックに伴い対面でのコニュニケーションが制限された中で就職や転職をした多くの人々も忘れてはならない。彼らにとってはすべての人が初対面になるのだ。
つながりをつくり出すことの難しさは、リーダーも理解している。リーダーたちの70%近くが「ハイブリッドワークへの移行に伴い、チーム内の結束やつながりを確保することが重要な課題になっている」と感じている。
いまこそ、リーダーはその重要性をあらためて認識し、行動を起こさなければならない。そうしなければ、企業を存続させるためのソーシャルキャピタル(社会関係資本)を失いかねないのだ。
リーダーは意図的にオフィスを利用して、ソーシャルキャピタルを再構築する必要がある。たとえば、新しいアイデアやインスピレーションを得る、手助けやアドバイスを求める、新しいキャリアアップの機会を見つけるなど、働く人々が自分のネットワークから得る価値を再構築するのだ。
ソーシャルキャピタルは「あれば好ましい」というものではない。従業員が最高の仕事をし、組織が革新を続けるために不可欠なものだ。したがって、あらゆるレベルで有意義なつながりを持てる環境を整えることは、すべての組織のRTO計画の中核になるべきなのだ。
最初の一歩は、オフィスに来ることによって「在席している人」を確認したいという欲求以上のものが満たされると従業員に示すことだ。リーダーは、人のつながりを構築・再構築することを優先して、創造性やチームワーク、強力なサポート体制を用意し、課題に取り組む力を与える必要がある。
これらを実現するために、次の3つの方法がある。