個人の将来設計にも戦略を

 危機の時代には、多くの人が健康や安全、生きがい、キャリア、家族、遺産など、実存的問題について考える。しかし、そうした思索は長く続かないことのほうが多い。日々やらなければならない目の前のことで押し潰されそうになり、長期的視点に立って考えたり、何を目指しているのか思案したりする時間的な余裕がなくなるからだ。その結果、大なり小なり何らかの人生の選択に直面すると、感情や直感に頼るしかなくなってしまう。

 言うまでもなく、これを企業に当てはめれば、戦略がないまま事業運営をするようなものだ。それが愚策であることは、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)の読者なら誰でもご存じだろう。

 しかし、世界中の組織に長年コンサルティングをしている筆者らは、ふと思った。我々が法人顧客向けに使っている戦略的思考モデルを応用すれば、個人の将来設計に役立つのではないかと。その答えは「イエス」だ。