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新しいコアバリュー・ステートメントのあり方
1990年代、新たなトレンドがビジネス界を席巻した。大企業が次々と自社の道徳的信念を公表し、それがコアバリュー・ステートメントとして浸透したのである。
このトレンドは日本企業から大きな影響を受けている。トヨタやソニーグループなどの企業は、製品の品質の高さで知られるようになったが、それを可能にしたのは団結力の高い企業文化であった。その成功に倣って、欧米企業も自社のコアバリューを策定すべきだと推奨され、「チームワーク」や「卓越性」といったキーワードがよく使われた。
その後の数年間で、コアバリュー・ステートメントの目的と内容は進化していった。たとえば、コーポレートブランディングの台頭によって、「喜び」(joy)や「情熱」(obsession)といったダイナミックな概念がステートメントに表現されるようになった。同様に、2000年代初頭にエンロンやワールドコムのような企業の不祥事が起こると、「誠実さ」や「正しくある」ことを強調する企業が多くなった。
しかし最近では、コアバリュー・ステートメント自体が、さまざまな形式に分裂し始めている。特定のステークホルダーをターゲットに定め、異なる名称、またはより具体的な名称で言い表す企業が増え、項目の箇条書きで構成されているというステートメントの既成概念から脱却しつつあるのだ。
実際、今日のフォーチュン100の3分の1以上が、コアバリュー・ステートメントに代わるものを掲げている。信条、ウェイ、マニフェスト、あるいはペプシの「Pep+」やCVSヘルスの「職場行動に心を向ける」のように、商標登録された基本理念や信念を掲げている企業もある。
この傾向は歓迎されるべきだと筆者らは考えている。価値観を自由に表現できる企業ほど、典型的な問題へ対処する手段が増える。そうした企業では、コアバリューが戦略から切り離されていたり、ステークホルダーに知られていなかったり、従業員に実践されなかったり、ホームページのお飾り程度にしか考えられていないといった課題を克服できるのである。
本稿では、この変化が起こっている理由と、コアバリュー・ステートメントに代わるものの新たな可能性を引き出す方法について説明する。
変化の理由
筆者らは、企業がコアバリュー・ステートメントに代わる新しいものを求めるようになったことには3つの理由があると考えている。