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早急な新入社員教育が必要とされる時代
2021年10月、デルタ航空CEOのエド・バスティアンは、コロナ禍からの再出発に当たり、自社の従業員構成が大きく変化したことについて言及した。彼は投資家に向けて、それを「若手ベネフィット」と呼んだ。「経験豊富な従業員の多くが引退を選択し、その結果、若い人たちにチャンスが広がった」と彼は述べ、この変化は会社にとって有益なものだという見方を示した。しかし、若手ベネフィットにはマイナス面も伴う。
デルタ航空は、他の航空会社と同様に新入社員の実践教育に苦労した。「当社が取り組んでいる一番の問題は、雇用ではなく、実地での訓練や経験の不足です」と、数カ月後の決算説明会でバスティアンは語った。バスティアンは航空会社の仕事の複雑さを強調し、新入社員には「かなり大きな学習曲線」が求められることに注意を促した。「一朝一夕に仕事を覚えることはできません」
この課題はデルタ航空に限ったことではない。製造業から医療に至るまで、どの業界においても、新しい人材が戦力となるまでに何年も待つという余裕は、とうの昔になくなっている。今日のダイナミックな経済で成功するには、新入社員にこれまで以上に速く学習曲線に乗せる必要がある。しかし、筆者らの最新の研究によれば、学習を促進すべき要素の一つが、最も必要とされる時に欠けている場合が多いことがわかった。それは、心理的安全性である。本稿では、リーダーが知っておくべきことを以下に挙げる。
最も必要な時に失われる心理的安全性
人が職場で学習し、協力し、能力を発揮するうえで、心理的安全性が果たす役割の大きさは、数十年にわたる心理的安全性に関する研究によって明確に示されている。人から物覚えが悪く、仕事ができないと見られる恐怖心を減らす心理的安全性は、新しい役割や組織に馴染むために不可欠な、質問をしたり助けを求めたりするといった学習行動を可能にする。新入社員にとって心理的安全性が重要なのは、それによって、失敗する可能性を認めるという不快な感情に対処し、新しい仕事における急勾配の学習曲線に立ち向かい、新しい視点を受け入れることができるからである。
筆者らの最新の研究では、心理的安全性に関する、憂慮すべき興味深いパターンが明らかになった。ある大企業で1万人以上の従業員を調査したところ、新入社員の心理的安全性が急速に損なわれていることがわかった。新入社員は、勤続年数の長い社員に比べ、高い心理的安全性を持って入社するが、その後それが低下し、入社時のレベルに戻るまで何年も要することがわかった。
筆者らは、「スウッシュ」(swoosh)と名づけたこの現象に興味を引かれた。スウッシュは一貫しており、新型コロナの流行前、流行中、流行後の何年も変わらず、また人種や性別といった属性にも影響されなかった。従業員が入社時の心理的安全性レベルに戻るには、20年以上かかる可能性があることが示唆された。さらに筆者らは、心理的安全性の高い部署という支援的な環境が心理的安全性の低下を抑制すると分析したが、それでもなお、心理的安全性の低下はどのような条件においても存在した。