飛び抜けて優秀な従業員をどうサポートすべきか
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サマリー:飛び抜けて高い成績を収める「ハイアチーバー」であっても、自己満足に陥らず、新たな高みに到達するためには、指導が欠かせない。彼らの成長に必要なのが、ニーズに合ったメンターシップだ。すなわち、ハイアチーバ... もっと見るーのグロースマインドセット(成長のマインドセット)を維持し、EI(感情的知性)を発展させ、ネットワークを広げるサポートである。本稿では、メンターがこれら3つのサポートを行うためのアドバイスを紹介する。 閉じる

高い成績を収める人に必要な指導とは何か

 飛び抜けて高い成績を収める「ハイアチーバー」を指導することは、リーダーにとって最もやりがいがあり、挑戦的な側面の一つだ。こうした人々はすでに大きな成功を収め、豊富な経験を持ち、着実に実績を積んでいる。しかし、最も高い成績を収めている人であっても、自己満足に陥らず、成長を続け、新たな高みに到達するためには指導が欠かせない。ハイアチーバーが前進し続けるためには何が必要なのか。それは、彼らのニーズに合ったメンターシップだ。

 ハイアチーバーは、成功に慣れているとはいえ、失敗や挫折に直面する。失敗に直面する頻度が少なければ、自信を支えるための鎧が薄くなってしまうため、レジリエンスを試されることになる。失敗をはねのけるには、もう少し時間と労力がかかるかもしれない。そして、目前の状況以外にも目を向け、失敗が世界の終わりではないことを理解できるようにするために、より広い視野を持つ人が必要となる。

 彼らが自己憐憫に浸ることなく、こうした問題を乗り越える手助けをすることが重要だ。そして、困難を乗り越えるためのツールを提供し、それを学習の機会に変えてくれるメンターが欠かせない。効果的なメンタリングは、ハイアチーバーが不振に陥るのを避け、新たな情熱を発見し、影響力を拡大し、最終的にチームや組織内に高業績の文化を創造するのに役立つ。

 ノーベル賞受賞者、宇宙飛行士、オリンピック選手、その他のエリートアスリートなど、極めて優れたハイアチーバーを研究する社会科学者(ゴディアン)と、キャリアや人材開発における人間関係の役割に強い関心を持つプロの人間関係のストラテジスト(ロパタ)である筆者らは、ハイアチーバーのメンタリングには、しばしば見過ごされ、否定さえされているきめ細やかなアプローチが必要であることを目の当たりにしてきた。彼らが必要としているのは単なるガイダンスではなく、特有のニーズに合わせたメンターシップだ。ハイアチーバーは、グロースマインドセット(成長のマインドセット)を維持し、EI(感情的知性)を発達させ、ネットワークを広げるためのサポートを必要としている。これらのニーズを理解し、対処することで、メンターはハイアチーバーが卓越し続け、組織に大きく貢献できるよう支援できる。

グロースマインドセットの育成

 成功する人は、成果を上げることで成長し、未知への挑戦を生きがいとする。グロースマインドセットを維持することは、彼らの継続的な成長にとって極めて重要だ。ハイアチーバーには、継続的な学習と向上を奨励するメンターが必要である。既存のスキルを高め、コンフォートゾーンから飛び出すことができる新しい分野や技術、方法論を紹介すべきだ。たとえば、経験豊富なエグゼクティブであれば、新たなデジタルトレンドや革新的なリーダーシップの実践に関する知見が役に立つかもしれない。

プロからのアドバイス

 ハイアチーバーは成功に慣れているため、失敗を受け入れるのに苦労することが多い。彼らが失敗を成長プロセスの一部として受け入れられるように、メンターは「フェイリング・フォワード」(failing forward)というコンセプトを強調するとよい。これは、ミスや失敗を挫折ではなく、貴重な学習経験として捉えるという意味だ。

 同じように失敗に直面し、その経験を糧にさらなる高みへと突き進んだ他のハイアチーバーのエピソードを紹介するのも一つの方法だろう。メンターはまた、ハイアチーバーに過去の失敗を振り返り、何を学び、それがどのように成長につながったかを明らかにするよう促すこともできる。失敗を当たり前のことと捉え、それを成功への道のりの重要な一部と位置づけることで、計画通りに物事が進まない時でも、ハイアチーバーがレジリエンスを高め、自信を維持できるように促せる。

 そして、さらに一歩踏み込む。メンティに、彼らがコンフォートゾーンから飛び出すような示唆に富んだ質問やシナリオを投げかける。「あなたの業界が一夜にして大きな技術的転換を迎えたらどうするか。あなたならどのように適応し、チームを導くか」といったものだ。思考を広げるカンファレンスやワークショップへの参加も勧めるべきである。「これは実験であり、少なくとも一度は試すべきことだ」という考え方を持って、継続的な学習と向上を受け入れるよう促す。