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現金とポイントのどちらを好むのか
『エコノミスト』誌の記事が航空会社のマイレージプログラムに代表されるポイントプログラムの目を見張る拡大ぶりに光を当て、伝統的な通貨に取って代わる可能性を指摘したのは、2005年のことだった。それ以降、この種のプログラムは規模と用途の面で急速に成長してきた。たとえば、サウスウエスト航空のマイレージポイントの利用件数は、2013年には540万件(同社の有償旅客輸送距離全体の9.5%)だったが、2023年には1090万件(同16.3%)に跳ね上がった。
旅客航空ビジネスやホテルビジネスなど、さまざまな業種で、ポイントが現金の代わりに用いられている。こうした急激な利用拡大に伴い、いくつかの重要な問いが浮かび上がってくる。消費者は、ポイントを伝統的な通貨と同じように扱っているのか。そして、現金とポイントのどちらを使うかはどのように決めているのか。
結論から言えば、消費者のポイントと現金に対する態度は非常に多様である。最近、筆者らが実施した調査では、500人のマイレージプログラム利用者が直近2年間に行った、合計2万9000件のポイント獲得・使用データを分析した。すると、消費者のポイントに対する態度が4つの明確なカテゴリーに分かれることがわかった。
・現金派:ポイントと現金がまったく同じ購買力であっても、現金をより手元に残そうとする。100ドル相当のポイントと100ドルの現金のどちらを用いるかを選択する場面では、いつもポイントを使うほうを選ぶ。そのほうが心理的な負担が少ないからだ。このタイプの人たちは、現金を優先し、現金に最も大きな価値を見出す。
・無差別派:ポイントと現金をまったく同等に考える。両者の金銭的価値は完全に同じだと考えている。このタイプの人たちにとって、ポイントは現金と同様で、実質的にもう一つの通貨と位置づけられている。
・ポイントゲーマー:最も有利な形でポイントを活用することに血道を上げる。具体的には、ポイントの価値が現金を大きく上回るタイミングで使用することを選ぶ。それを通じて、実利を得るだけでなく、楽しみを見出している。このタイプの人たちにとって、ポイントプログラムは挑みがいのある娯楽にほかならない。
・ポイント愛好家:実際の購買力は現金と同等、もしくは現金より小さい場合でも、現金よりポイントを価値あるものと考える。
以上の4つのカテゴリーは、「フライヤートーク」のようなソーシャルメディアでの議論にも反映されている。「フライヤートーク」の利用者たちは、ポイントにどの程度の価値があり、ポイントで支払うのと現金で支払うのはどちらが好ましいかといったことを熱心に議論している。