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ベテラン・マネジャーのパフォーマンスがなぜ低い
ソフトウエア開発プロジェクトのチーム・リーダーとして経験豊富なベテランがほしいと思った時、真っ先に名指しされるのは、アレックスのようなマネジャーだろう。
現在シニア・マネジャーのアレックスは、ソフトウエア開発一筋というキャリアの持ち主である。NASA(アメリカ航空宇宙局)で科学研究用ソフトウエアの開発責任者を務めたのを最初に、その後は民間企業や政府機関で複雑なソフトウエア開発プロジェクトを数々担当してきた。
我々は、アレックスのようなプロジェクト・マネジャー数百人を対象に大規模調査を実施した。そのテーマは「複雑な環境下における経験学習」である。彼ら彼女らには、「スキルに関する調査」として依頼し、コンピュータ・シミュレーション・ゲームにも参加してもらった。
このシミュレーション・ゲームにおいては、ソフトウエア開発プロジェクトの一から十まで、すなわち計画立案から進捗管理、指導、結果管理などが必要になる。この架空のプロジェクトで設定された目標は、期限内および予算内で、できるだけ高品質のソフトウエアを開発することだ。これはバグの数で評価した。
このシミュレーション・ゲームでのアレックスの判断と最終的な成績は、被験者全体で見て、まさしく典型的なものだった。彼は、エンジニア4人という小規模のチームで開発を始め、まずは開発作業に集中した。このやり方は短期的には奏功する。実際、チームの生産性は高く、開発スピードも速かった。
ところが、プロジェクトの規模が当初の見込みを超えて拡大した時、問題は起こった。アレックスは、スタッフを増員しなかったため、メンバーの負担が増え、当然ながらスケジュールが遅れ始めた。その結果、ミスが増え、メンバーたちは極度の疲労と人手不足に悩まされた。
彼はこの時点で、エンジニアの人数を増やすことを決めたが、新しいエンジニアがすぐに見つかるわけもなく、また見つかってもこの仕事にすぐに慣れるわけでもなく、スケジュールはさらに遅れていった。
また、初期段階で品質管理への注意が足りなかったのか、この段階でバグ数がいっきに増えた。これらのバグを修正するには、さらなる時間と労力が必要になる。結局、出来上がったソフトウエアはバグだらけで、期限も予算もオーバーというありさまだった。