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適応型リーダーシップの必要性
また厳しい時代が訪れ、これを乗り越えなければならないが、それも一時のことである──。現在の不況をこう思えるならば、まことに心強い。
現在は、緊急性、ハイ・リスク、不確実性が三つ巴になった状況といえるが、残念ながらこの不況が終わった後も、これが常態化するだろう。また、いかなる国の経済も、激化するグローバル競争、エネルギー面の制約、気候変動、政情不安などの影響から逃れられない。
当座の危機は、政治家と官僚たちがその手腕を発揮して法制度を調整すれば、どうにかやりすごせるかもしれないが、現在は、未曾有の難題が次々に起こる、いや果てしなく続くという危機の初期段階にほかならない。
ここで、真夜中に心臓発作に襲われた患者について考えてみよう。救急救命士たちが大急ぎで病院に運び込むと、容態に応じて対処している余裕はほとんどないため、救急治療班がとにかく手順に従って処置をする。そして、患者を安定させた後、心臓に新たな血液を送り込むためにバイパス手術を施す。
どうにか緊急事態を脱し一段落しても、リスクの高い問題がいくつか残っている。術後回復した患者は、どのように再発を防げばよいのか。九死に一生を得たこの患者がまた安心して暮らしていくために、不確実な新しい現実にどのように適応すればよいのか。つまり、危機は完全に去ったわけではないのだ。
大企業のCEOであれ、緊急プロジェクトを任されたマネジャーであれ、危機的状況が続くなかでリーダーの役割を果たすのは並大抵のことではない。
危機下のリーダーシップには、大きく2段階ある。まず「緊急段階」であり、ここでのリーダーの仕事は、状況を安定させ、時間を稼ぐことである。次が「適応段階」であり、ここでの仕事は、危機の原因に対処し、新しい現実のなかで生き抜く力を身につけることである。
後者の適応段階は、とりわけやっかいである。社員たちが、あなたの知識を過大評価し、無知については割り引いて考えていたにしても、リーダーならば毅然とした態度で自分たちの不安に対処してほしいとプレッシャーをかけてくる。