
-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
マネジャーが多様なメンバーをまとめるために会得すべき能力
企業のダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)が岐路に立たされている。DEIの取り組みに対するビジネスケースは、20年にわたる厳密な調査によって構築された。人種的に多様なチームは収益性において競合他社を上回り、女性が執行委員会の4分の1以上を占める企業は女性役員のいない企業よりも利益率が10倍高いという研究結果が一貫して示されている。
2020年にジョージ・フロイドが殺害され、米国で蜂起が起きると、企業は消費者の要望に応え、この調査を信頼してDEIの取り組みを導入し、経営やチームの信頼構築を支援し、最終的には収益の強化や無駄なコストの削減につなげようとした。しかし、この2年間でDEIに対する反発が広まり、多くの企業がDEIチームからリソースを引きあげたり、チームを解散したりしている。また、ソサエティ・フォー・ヒューマン・リソース・マネジメント(SHRM)のようにDEIの「E」を削除したり、エンゲージメント、パーパス、コミュニティ、ビロンギングといった、より「中立的」とされる言葉を使ってDEIの名称を変更したりする企業もある。
政治的な動機も大きいが、反発の根底にある中心的な主張は、DEIの取り組みが職場の対立、不名誉、非難、罪悪感を助長するというものだ。攻撃を先導する議員や保守的な批判者は、こうした感情に乗じて、多様化が進む職場や世界におけるビジネス戦略の不可欠な部分を政治的に利用している。
DEI全体の将来は不透明だが、マネジャーは個人として、職場での対立に対処し、緩和する能力を身につける必要がある。多様な意見やアイデンティティを持つチームを監督し、ビジネス目標を達成するために上司と連携している場合はなおさらだ。マネジャーはその際、神経科学を活用して、DEIの課題の根本原因に対処することができる。その根本原因とは、バイアスだ。
DEIの課題の根本原因:バイアス
弁護士であり社会科学者でもある筆者は、意図せずDEIのプロフェッショナルとなった。弁護士としてのキャリアの初期に、ヴェラ司法研究所で業界横断的な研究を行い、アイデンティティに基づく分野を超えた課題の根本的な原因は、バイアスであると特定した。しかし、一般に信じられていることに反して、バイアスは先天的なものではないことを筆者の研究は明らかにした。私たちは生まれながらにして、男性は女性より数学が得意だとか、白人は有色人種より優れたリーダーだと信じているわけではない。他のバイアスと同様、こうしたステレオタイプは学習された習慣であり、2つの形がある。学習された誤った信念であるコンシャス(意識的)バイアスと、学習された思考の癖であるアンコンシャス(無意識的)バイアスである。どちらも人間の知覚、推論、記憶、意思決定の方法をゆがめてしまう。
これらの習慣は個人的なものではなく、科学で証明されているように、人間の脳が誤った概念を肌の色、髪質、アクセント、声のトーン、性別などの特徴と関連づけるように訓練されてきた。神経心理学者のドナルド・ヘッブは、このプロセスを「ともに発火するニューロンはともに結びつく」と表現した。
職場におけるコンシャスバイアスに対処するため、企業はしばしば会社の人事方針、研修、法的救済策に頼る。しかし、発見するのも対処するのも難しいアンコンシャスバイアスは、DEIの課題の根底にある。アンコンシャスバイアスには、多様な人材の採用、定着、昇進、報酬における障害や、マイクロアグレッションとして認識される可能性のあるミスコミュニケーション、業績評価に反映される不公平などが含まれる。さらに、このバイアスは、顧客サービス、製品開発、広告戦略に影響を与える可能性がある。