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多くのリーダーが不透明な時代に不安を抱いている
いま、多くの人が、過去と未来の間で宙に浮いているような状態だと感じている。米国の場合、この不透明感は、長期に及んだ大統領選のプロセスを反映しており、その影響が世界中に及んでいる。だが、問題はさらに大きい。組織においても社会においても、不透明な場面が増えて、その結果、多くの人がいわゆる境界体験(リミナル・エクスペリエンス)をしているのだ。
境界体験には、通常のあり方や行動から長期にわたり離れることが含まれる。慣れ親しんだ物事から遠ざかる状態を意味するが、新しい何かが完全に取って代わったわけではない。不快なくらい通常とは異なるが、同時に、混乱するほど通常の時と似ている。その段階が終わった時、それを乗り切った人たちは永遠に変わっている。
筆者らが境界体験について、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)に初めて寄稿したのは、コロナ禍のまっただなかにあった2021年のことだった。コロナ禍が収束した時、ほとんどの人は、10年に1度の試練を乗り越えたと思ったものだ。ところがその後も、現代のライフスタイルやその性質に深遠な挑戦状を突きつける物事が数多く起こった。すなわち、エネルギー危機、欧州や中東での戦争、前例のない政治情勢、そして異常気象、気候変動に対する不安などである。組織レベルでも、ハイブリッドワークや生成AIのまだ見ぬ影響により、集団としての働き方に疑問符が突きつけられてきた。
これらの課題は皆、言うまでもなく、多くの人を不安にし、懸念を抱かせている。自分の足元がぐらついている時、どこに立てばよいのか。地盤の変動が止まらず、誰もが受け入れられるような「ニューノーマル」が現れてこなければ、どうなるのか。
筆者らは、研究の過程で、多くのリーダーから話を聞いてきた。彼らは不透明で時代のはざまにある現代のこうした疑問に対する、混乱と不安を口にした。問題は、リーダーは対処法を知っていることを期待されるが、ほとんどのリーダーは対処法を知らないことだ。
大きな問いを投げかける
この「はざま期」に苦しむ同僚を助けるために、リーダーには何ができるのか。また、リーダーが自分自身を助けるために何ができるのか。まずは、3つの基本的でありながら非常に重要な問いから始めるとよいだろう。
あなたは何を大切にしているか
目の前の課題から一歩下がることを自分に許せば、このはざま期は、自分にとって一番大切なことを思い出させてくれる時期になる。自分をこの段階に追い込んだ出来事と、それに対する感情は、何を一番大切に考えているかを教えてくれる。たとえば、ある状況に腹が立つなら、それはおそらくあなたが深く気にかけている領域を、何か(または誰か)が侵害したからだろう。
したがって、この時を自分の価値観を確認し、肯定して、自分自身をより理解する機会だと考えよう。はざま期の経験は、世界のあり方やあるべき形について、自分の思い込みに疑問を投げかけ、そのような思い込みが依然として有効かを自問する機会になる。