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複雑性が増すいま、いかにビジネス機会を見出すか
世界が複雑性を増し、異なる要素の相互作用が強まり、大量のデータがあふれ返るにつれて、企業はますます複雑なデジタルのエコシステムの中で活動するようになっている。このような新しい世界では、これまでにない可能性を切り開き、価値をつくり出す新たな方法が生まれる。
しかし、よいことばかりではない。アイデアを現実に転換するためには──そしてそれ以前に、そもそもどのようなことが可能なのかを理解するためには──これまでよりも多くのプレーヤーと関わり合い、より入り組んだ相互依存関係に対処しなくてはならない。
複雑なエコシステムにおいては、極めて多様な有力プレーヤーがつながり、すべてのプレーヤーがそれぞれのビジネスモデルを持って、独自の経済的利害のために行動する。
そうしたエコシステムの例としては、モバイル決済(銀行、商店、端末メーカー、通信キャリアで構成)、エデュテック(学校、監督官庁、コンテンツ提供者で構成)、アグリテック(農業テクノロジー分野のスタートアップ企業、農業関連企業、農機具メーカー、農家で構成)、AI(クラウドサービス、AIデベロッパー、大学、アプリ開発者で構成)、Web3(ブロックチェーン・プロバイダー、マイニング業者、アプリ開発者、暗号資産交換業者で構成)などを挙げることができる。プレーヤーはしばしば相互依存関係にあり、これまでにない複雑な形で関わり合っている。
このような複雑な状況の下では、斬新な新製品や新しいテクノロジーを開発しようとする際に、深刻な試練が持ち上がる。ある市場が存続可能かどうか、また、あるアイデアが実を結びそうかどうかがわからない場合、これまでの常識によれば──そうした常識は、リーンスタートアップやアジャイル開発の方法論の一環として提唱されてきた──最低限機能するモデル、つまりプロトタイプをつくり、それを市場に送り出して、顧客に支持されるかどうかを見るべきだとされてきた。
狙いは、出費を必要最小限に抑えて、そのアイデアの妥当性を検証するうえで不必要な特徴や機能に投資しないようにすることにある。もしプロトタイプが好ましい反響を得られれば、そのプロダクトにさらに磨きをかけて、開発を進めてよいという結論を導き出せる可能性が高い。もし反響が悪ければ、方向転換したり、他の選択肢に労力を費やすと決めたりすることになるかもしれない。
たしかに、アイデアがシンプルで、潜在的なユーザーにプロダクトを試用させやすい場合、プロトタイプづくりは、フィードバックを得て、アイデアの妥当性を検証するための素晴らしい方法といえる。反応がよければ、そのアイデアがうまくいく可能性が高いと見なせる。
しかし、残念ながら、複雑なエコシステムの中でビジネスを行う場合、このロジックに従っても好ましい結果を得られない場合が多い。プロトタイプをつくっても、あまり利用されず、データもほとんど得られない可能性があるのだ。時には運よく大ヒットに恵まれることもあるかもしれないが、役に立たないフィードバックばかりが山積みになり、どうすべきかという指針がはっきり見えてこない可能性のほうが高い。