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世界937社への調査から見る契約交渉の現実
今日の激動のビジネス環境で生き抜くには、オープンで協働的な関係がますます重要になりつつある。この点は、多くの企業幹部が認識しており、契約の交渉に携わる人も80%以上がこの考え方を支持している。
ところが、筆者らが最近行った世界規模の研究からは、驚くべき現実が浮き彫りになった。ほとんどの企業はいまだに、時代遅れの敵対的なアプローチで交渉に臨んでいるのだ。そのような対立的なマインドセットは、イノベーションと成長を阻害するばかりでなく、多くの価値を獲得し損なう。
私たちは、なぜそのようなパターンに陥るのか。そこから脱却するには、どうすればよいのか。
企業は契約の交渉に対する自社のアプローチを根本から見直して、対立回避のマインドセットを脱却し、協働的な価値創造のマインドセットに移行すべきだ。それは、交渉で「親切」に振る舞うべし、という話ではない。重要なのは、目に見えていない可能性を解き放ち、イノベーションを牽引し、持続可能で互恵的な関係を築くことだ。その一環として、信頼できるパートナーを選ぶ能力を強化する必要もある。
筆者らは、多国籍企業と中小企業の両方を含む世界の937社を対象に大がかりな調査を実施し、最も交渉の対象にされている契約条件がどのようなものかを調べた。この研究を通じて、いまビジネスの世界で行われている契約交渉の現実がはっきり見えてきた。
・不適切な優先順位:最も交渉の対象にされている5つの契約条件(賠償責任の制限、契約金額の変更、損害補償の義務、契約の解除、支払いの方法)は、主としてリスクの軽減を目的としており、最悪のシナリオに関心を向けるものといえる。このような交渉のやり方が交渉相手に対して発するメッセージは、「あなたのことを信用していません」というものだ。
・交渉と現実のずれ:企業は法的保護や罰則についての契約内容を交渉するために膨大な時間を費やしているが、契約を履行する過程で最もよく持ち上がる対立の原因は、料金、業務範囲、納品といった実務的な問題だ。
・力の不均衡:交渉のプロセスを左右するのは力だ。交渉担当者の57%は、相手方がそもそも交渉する意思を持っておらず、その取引に適しているか否かに関係なく、自社がいつも使っている契約書の雛形をそのまま押しつけようとすることが珍しくないと答えている。