部下が仕事の意義を感じられるフィードバックの方法
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サマリー:マネジャーの多くはフィードバックを避けがちだが、それにより部下の成長機会を奪う可能性がある。フィードバックは、信頼関係や企業文化を築くだけでなく、従業員が仕事に意義を見出す重要な機会となる。特にZ世代... もっと見るはパーパスを重視していることから、適切なフィードバックが生産性や定着率の向上につながる。本稿では、フィードバックが仕事の意義を高める理由と、その効果的な方法を紹介する。 閉じる

フィードバックは仕事に意義を見出すうえで極めて重要である

 もしあなたが、多くのマネジャーと同じなら、自分のチームに建設的なフィードバックを与えるのが嫌いかもしれない。それは、ぎこちないもので、居心地が悪く、効果がないことも多い。従業員に「間違っている」とわざわざ指摘する価値があるのか、疑問に思うかもしれない。もっと差し迫ったことがあるのに、長々と話をする時間をつくるのは無駄ではないか。チームメンバーを傷つけたり、対立を生じさせたりするリスクもある。だが、その結果、「やめておこう」という結論に行き着けば、部下たちの成長を助け、彼らが求めている建設的な批判を受ける機会を奪うことになるかもしれない。

 筆者は長年にわたり、大学院でフィードバックについて教え、エグゼクティブ相手のコーチングでは有効なフィードバックの与え方を指導し、フィードバックに関するワークショップを多数開催してきた。そこで明らかになったのは、マネジャーは皆、フィードバックの重要性を完全に理解していることだ。それはそうだろう。彼らは成績が振るわない部下を管理したり、正しい仕事の方向性を確保したりするために、有効なフィードバックを与える方法について多くの研修を受けてきた。信頼関係と説明責任と思いやりに基づく企業文化を構築するためには、フィードバックが不可欠であることも学んできた。

 だが、フィードバックの重要性に関する会話には、その本当の理由が欠けていることが多い。フィードバックは、従業員が日々の仕事に深い意義を見出す上で決定的に重要なツールとなるのだ。

 従業員は意義を切望している。正当な報酬や安全な労働条件など、仕事の基本的なニーズが満たされた時、従業員が仕事にもっとも望むのは意義だ。これはZ世代の場合、とりわけ顕著だ。人材情報サイト『モンスター・ガバメント・ソリューションズ』の調査によると、Z世代の労働者の約75%が、仕事のパーパスは給与よりも重要だと答えている。たしかに、仕事に意義は重要だ。日々の仕事で充実感と意義を感じる従業員は、生産性が高く、定着率が高く、仕事への満足度も総じて高いという研究結果もある。

 マネジャーがチームメンバーに与えるフィードバックは、彼らが日々感じる仕事の意義に直接的な影響を与える。有効なフィードバックは、最も平凡なタスクにも深いパーパスを与えることができる。

 本稿では、フィードバックが仕事に大きな意義をもたらす3つの理由と、マネジャーが最大限の意義を与えるためのフィードバックの方法を紹介しよう。

フィードバックが有意義な仕事をもたらす3つの理由

1. フィードバックは仕事をマスターする助けになる

 適切なフィードバックは、どのように行動を変えればよいかを従業員に教えてくれる。フィードバックは、従業員がよりよくなるための、あるいはスキルを完璧にするための改善を可能にしてくれる。仕事をマスターすること、また、その過程や困難を克服するプロセスは、有意義な仕事の極めて重要な要素だ。人間は幼い時から、何かをマスターすることを切望する。2歳児でも、2つのブロックのおもちゃをくっつけようと何度も試し、ついに「カチッ」とはまった時は純粋な喜びを示すものだ。その喜びは職場でも起こりうる。マネジャーのフィードバックは、従業員が改善を積み重ねるためには何をする必要があるかを教え、仕事をマスターするプロセスを助ける。

 仕事をマスターするよう励ますフィードバックは、どのように与えればよいのか。まず、難しいタスクを与えることを恐れず、従業員がそれをこなす過程でフィードバックを与えよう。いつもより難しい仕事かもしれないが、マネジャーであるあなたがサポートすることを事前に知らせること。次に、最も重要なことだが、従業員が苦労している時、そのタスクやプロジェクトを乗っ取らないようにすること。そのような時は、代わってやることが「親切」に思えるかもしれないが、実際にはその従業員が苦難を乗り越える喜びと、より有意義な仕事をする機会の両方を奪うことになる。そして、フィードバックを与える時は、従業員が難題に取り組んで学んだことを応用できる別の場面を示そう。

2. フィードバックは従業員のインパクトを明確にする

 体系的なフィードバックは、ある行動を観察することから始まり、そのうえで、その行動が個人やチーム、プロジェクト、組織に与えるインパクトを指摘する。このインパクトは、自分の仕事がなぜ重要なのか、そして自分自身がなぜ重要なのかを従業員が理解する助けになる。組織心理学者のアダム・グラントは、コールセンターの従業員は自分の仕事が相手に与えるインパクトを深く理解すると、生産性が高まるだけでなく、仕事への満足感と意義も高まることを研究で明らかにしている。

 だが、仕事に意義を見出すきっかけになるのは、その仕事がもたらすインパクトだけではない。自分の所属部門以外の場所で、自分の仕事がどのように活用されるかがわかると、その従業員は日々のタスクにより大きな満足感と意義を見出すことができる。