Z世代のエンゲージメントを高める7つの戦略
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サマリー:Z世代の従業員は、大人へ移行するタイミングでパンデミックという混乱を経験しながらも、集団的な力で選挙結果を左右するなど、企業や社会に大きな影響を与える存在になっている。その一方で、彼らは仕事へ打ち込め... もっと見るずに悩んでいるという。したがって、マネジャーはZ世代をサポートしながら、彼らがしっかりと仕事に没頭できるようにする必要がある。本稿では、Z世代をサポートし、チームの原動力を生み出すための7つの戦略を紹介する。 閉じる

Z世代のエンゲージメントを
いかに高めるか

 1995~2010年頃に生まれたZ世代は、米国史上、最も人種的、民族的に多様性が高い世代だ。また、職場や社会において、自分が何者であり、何を支持するかを形成するうえで、マクロな社会運動や制度的な問題に影響を受け、影響を与えてきた世代でもある。所得格差が拡大し、社会的流動性がかつてないほど高まる中、人種差別をはじめとした差別、セクシュアルハラスメント、銃による暴力、気候変動と闘う運動において、彼らは重要な役割を担っている。

 こうした問題を新型コロナウイルスがことごとく悪化させた。パンデミックは米経済を荒廃させ、ここ数十年で最も長く続いていた成長の流れを止めた。折しも労働市場に参入したZ世代は、多くがすぐにレイオフや解雇を経験している。これらの要因が重なって、Z世代は既存の社会や資本主義にますます幻滅した。そして、現状に対する不信感、断絶、焦りを抱えており、自分たちが関心を持つ問題に対して、すぐに行動を求める世代だと見なされるようになった。

 一方で、彼らZ世代は、大人へ移行するタイミングで混乱を経験しながら、すでにさまざまな方法で社会と職場を形づくり、影響を与えている。2022年の米中間選挙では、Z世代の政治的選択が結果を左右し、集団としての力が明らかになった。

 さらに、Z世代の従業員は自分たちの価値観や優先度の基準を職場に持ち込み、特に評価や報酬に関する透明性を求めて、大きな影響を及ぼし始めている。ただし、Z世代は仕事へ打ち込めずに悩んでいるようだ。2022年のギャラップの世論調査によると、Z世代の従業員の54%が「仕事に対し意欲的でない」と回答している。これは、他の世代よりもわずかに高いものの、「仕事に対して意欲を持とうとしない」という割合が高いわけではなく、心の葛藤が生じている。

 したがって、マネジャーはZ世代の従業員をサポートしながら、彼らがしっかりと仕事に没頭できるようにすることが重要だ。本稿では、コラボレーション、コミットメント、モチベーションの持続といったチームの原動力を生み出すための7つの戦略を紹介する。

1. 情報の共有を進めて不確実性への不安を和らげる

 Z世代は、情報にリアルタイムでアクセスできる環境で育った、正真正銘のデジタルネイティブ世代だ。世界の健康を脅かすパンデミックが引き起こした経済不安を経験し、米公衆衛生局のビベク・マーシー医務総監が「若者のメンタルヘルスの危機」と呼ぶ事態に直面している。その結果、将来をコントロールできるという感覚の欠如と不安を経験しており、「ほかのどの年齢層よりも高い割合で不安、鬱、極度の不安を抱えている」労働者グループになった。

 この世代と信頼関係を築き、より強いつながりを育むためには、透明性を優先させ、マネジメントとコミュニケーションの方法を「必要な人にだけ知らせる」という原則から「オープンアクセス」に転換する必要がある。業績が目標に達していない、サプライチェーンの問題が増えている、予算を削減することになるかもしれないなど、「守る」ために隠しているニュースや情報も例外ではない。情報にアクセスすることでZ世代の不安は軽減され、自分が情報を処理してコントロールできていると感じることができる。

 改善策を考えるために、次のような質問を通して振り返り、チームと話し合おう。

・チームのメンバーと複数のコミュニケーション手段で双方向の対話ができているか。
 メンバーがどのコミュニケーション手段を好むかを確認して、現実的な対話を行う頻度をすり合わせる。

・チームの戦略や組織への影響を共有し、議論する場を設けているか。自分たちの役割が戦略にどのような影響を与えるか、チームは理解しているか。
 チームが目標を達成するために必要な前提について話し合う。彼らは成功するために、必要な権限を与えられていると感じているだろうか。

・新しい情報の影響を考慮しながら、チームミーティングを活用して、結果、業績、将来の見通しについて議論しているか。
 将来の見通しやビジネスに与える影響について、率直かつ誠実に話し合う。目標達成のために力を与えられ、サポートされていると感じているか、チームに聞いてみる。

・さらに透明性や明瞭性が必要なこと(明確な役割と責任、期待など)について、繰り返しチームに意見を求めているか。
 メンバーが自分は見てもらっている、耳を傾けてもらっていると感じられるように調整や承認を行う。