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集中力が途切れやすい現代
取り組もうと決めていた仕事に取り組むために、PCの前に座る。ところが待っていたかのように受信トレイの通知音が響き、スマートフォンが鳴る。そして、いよいよ仕事に取りかかろうとしたその時、反射的にスマートフォンに手を伸ばし、見出しを流し読みし、ソーシャルメディアをスクロールする。こうしたデジタル上の寄り道をするたびに、集中力は途切れる。
こうした中断は、外部からのものであれ、みずから引き起こすものであれ、もはや例外なく私たちの標準的な状態になっていると、ポジティブ心理学の専門家でFinding Focus: Own Your Attention in an Age of Distraction(未訳)の著者であるゼラーナ・モントミニーは述べている。「私たちは脳が中断を必要とし、それを求めるように学習させてきた。まるで、注意散漫であることに依存しているかのようだ」
これは偶然ではない。現代のデバイスはこの脆弱性を利用するように設計されている。「通知や『いいね』、メッセージを通じて一時的なドーパミンの分泌を引き起こし、私たちをデジタル上の承認を求める連鎖から抜け出せない状態にしている」
多くの人が自分は中断をうまく扱えると思っている。しかし、カリフォルニア大学アーバイン校の情報学部総長特任教授で『ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学』の著者であるグロリア・マークによれば、研究結果は異なる現実を示している。「頭の中をホワイトボードだと考えてみよう」と彼女は言う。「あるタスクやテーマに集中する時は、そのつど、ホワイトボードに書き出す。マルチタスクを行うと、常にさまざまな情報を消しては書き直すことになる」
こうした切り替えには代償が伴う。複数の研究によれば、マルチタスクは作業の完了までにより長い時間を要し、誤りが増加し、ストレスも高まることが示されている。「実行機能、すなわち脳のCEOにあたる部分が疲弊してしまうのだ」とマークは述べている。「その結果、気を散らす要因を排除したり、意思決定を行ったりすることが困難となり、より中断に対して脆弱になる」
では、どうすれば集中力を高め、集中状態を維持できるだろうか。中断を減らすためのシンプルな技術にはどのようなものがあるのか。より高い集中力を支える環境を整えるにはどうすべきか。以下に、専門家が提案する方策を紹介する。
基礎を固める
モントミニーによれば、集中力を高めるために脳を最適化するには、基本的なセルフケアから始める必要がある。「睡眠、水分補給、運動といった基本的な習慣を、まず重視する。世界中のあらゆるメンタルヘルス対策を試したとしても、十分に眠らず、水分補給をしていなければ、何の効果も得られない」