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会議の4分の1以上が従業員に悪影響を与えている
ジェイコブは深いため息をつきながらパソコンを閉じると、こめかみをさすった。1時間ほど前に終了した会議が、また脳裏に甦ってきたのだ。何とか集中力を取り戻そうとしても、混乱して要領を得なかった会議への怒りで気が逸れてしまう。会議の直後に予定していた1on1ミーティングは、すでに延期してもらった。とても集中できないとわかっていたからだ。こんなことのせいで、どれだけ多くの時間を失うのだろう。
それにしても、あまりにも腹立たしい会議だった。一部のチームメンバーが会話を支配し、そのあげく、何も決まらなかった。丸1時間かけて、何も生産的な成果がなかったのだ。しかも、これが初めてではない。ジェイコブはすっかり失望し、このプロジェクトに取り組むことに興味を失った。結局、フラストレーションを振り払い、その朝の勢いを取り戻したのは、何時間も経ってからだった。
ジェイコブの経験は、けっして特別なものではない。筆者らの最近の研究では、職場の会議の4分の1以上(28%)が、エンゲージメントや生産性の低下などの長期的な負の効果を従業員に及ぼしていることがわかった。これはかなり問題のある数値である。従業員は、毎週相当数の会議に参加しているのだから。さらに、筆者らが以前行った研究結果から、従業員の会議への態度が(給与や上司、仕事の性質に対する感情を考慮に入れたうえでも)全体的な仕事の満足度に強く影響するとわかったことを踏まえても、相当な数値といえるだろう。
こうした負の効果から数時間で立ち直る従業員もいるが、その後一日中、その影響を引きずる従業員もいる。問題のある会議の影響は、会議が終わった瞬間に消えるものではないのだ。
問題のある会議の後、一定期間、集中力やモチベーション、生産性が低下することがある。筆者らはそれを「会議の二日酔い」と呼ぶ。ノースカロライナ大学や労働管理プラットフォームのアサナで労働と組織を研究する筆者らは、そうした会議が引き起こす直接的な余波に対処すべく協働してきた。直近では、アサナのワーク・イノベーション・ラボの「ステート・オブ・ワークイノベーション」レポートに共同で取り組み、米国と英国の5000人以上の知識労働者を対象に、問題のある会議をどのように体験し、どのような影響が出ているかを調査した。
幸いなことに、研究結果によれば、会議のリーダーは会議の二日酔いを防ぐ予防手段を講じることができる。予防が不十分な場合でも、問題のある会議を経験した後で、より効果的に回復するための手段がある。
会議の二日酔いはどのようなものか
筆者らの調査では、回答者の90%以上が、たまに、または時々、会議の二日酔いを経験していると答えた。半数以上はこの二日酔いがワークフローや生産性に負の効果を与えていると答え、47%が仕事に身が入らなくなると報告した。こうした影響は多くの場合、反芻、つまり会議の一部が脳内で再生されることによって引き起こされる。回答者の約半数(47%)は、チームに疎外感を覚えるとか一人になりたくなるなど、同僚との交流への有害な影響を挙げた。
また、会議中のフラストレーションが同僚との会話にまで波及し、会議の後で私的に話し合うことがあるという人もいた。回答者の3分の1以上(36%)が、同僚に不満を吐き出して発散することが時々あると答え、4分の1以上(27%)は、よくそうしている、またはいつもそうしていると答えた。問題のある会議について不満を吐き出すことでソーシャルサポートを得られるケースもあるが、他方で、否定的な感情が同僚に拡散され、二日酔い効果が長引いたり増幅したりすることもある。
フラストレーションの根本原因について回答者に質問すると、最も多い理由は以下の通りだった。
・妥当でないテーマが議論されている(59%)
・明確なアジェンダや目的がない(59%)
・時間管理ができていない(53%)
・実行に移せる成果やフォローアップがない(48%)
・特定の人しか発言していない(39%)、なかなか発言できない(38%)
・ファシリテーションが機能していない(30%)