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ミドルマネジャーの未来を識者はどう捉えているか
ミドルマネジャー(中間管理職)の終焉をめぐる疑問や予測は、2011年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)に掲載したロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットンによるコラムや2015年のBBCの記事などで取り上げられるなど、議論は尽きない。それにもかかわらず、実際にはミドルマネジャーの割合は増え続けている。米国の労働力に関しては、1983年の9.2%から2022年には13%に増加しているのだ。
しかし最近、この役割の消滅について新たな警告が出ている。ガートナーは、2026年までに「20%の組織がAIを活用して組織構造をフラット化し、現在のミドルマネジメントのポストの半分以上を廃止する」と予想している。コーン・フェリーの新しい報告書によると、米国のプロフェッショナルの44%が、自社でマネジャーレベルの役職が削減されたと回答している。
ミドルマネジャーはバーンアウト(燃え尽き症候群)や不満を報告する割合が比較的高いことを考えると(ギャラップの新しい調査によると、マネジャーはエンゲージメントが最も急激に低下している)、企業がこれらの従業員に課している職務に問題があるのではないかと疑問を抱かざるをえない。
この傾向を分析するために、3組の専門家に「実のところ、ミドルマネジャーの将来はどうなるだろうか」と質問した。本稿ではその回答をわかりやすく編集したものを紹介する。
ラインマネジャーから変革の推進者へ
ラファエラ・サドゥンはハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のチャールズ・エドワード・ウィルソン記念講座教授(経営管理学)、ホルヘ・タマヨは同スクールの助教授である。2人は現在、企業内の業績の不均衡を左右するミドルマネジャーの重要な役割について研究している。
今日の組織は、その事業運営のあり方を大きく変えるような、重大な技術的変化や競争の激化に直面している。生成AIの進歩は、もはや日常的なタスクに留まらず、ホワイトカラーや管理職の役割にも侵入しており、これらの職務は自動化の影響を受けないという従来の考え方を揺るがしている。
同時に、顧客中心主義の圧力がかつてないほど高まっている。競争力を維持するために、組織は経営陣とエンドユーザーの間にある官僚主義的な距離を縮め、より高い俊敏性と対応力を発揮しなければならない。
こうした変化への対応策として、組織の階層(レイヤー)を簡素化するディレイヤリングが提唱されている。ミドルマネジメント層を廃止して、生産性、俊敏性、従業員のモチベーションの向上を図るのだ。しかし、このアプローチは重要な現実を見落としている。ミドルマネジャーが、かつてないほど重要な役割を果たすようになったことだ。変革の時代に、彼らは組織の適応能力を形成するうえで不可欠な役割を担う。