燃え尽き状態のマネジャーを回復させる6つの方法
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サマリー:多くのミドルマネジャーは、過剰な業務を抱えているにもかかわらず、与えられている時間やリソースが少なすぎるため、バーンアウト(燃え尽き症候群)を感じている可能性が高い。燃え尽きの問題には、魔法の特効薬の... もっと見るような解決策も存在しない。しかし、本稿で紹介する多面的なアプローチを実行すれば、あなたも、部下であるミドルマネジャーたちが燃え尽きから回復するための後押しができる。 閉じる

ミドルマネジャーを襲う燃え尽き症候群

 あなたの下で働くマネジャーたちは、バーンアウト(燃え尽き症候群)を感じている可能性が高い。ミドルマネジャーたちは、大きな重圧の下で仕事をしている。何しろ、上層部から言い渡された戦略を実行しつつ、チームメンバーにコーチングを行い、成長させなくてはならない。彼ら自身の多くは、上司から育てられたり、エンパワーメントされたりした経験がないにもかかわらず、だ。

 しかも、十分なリソースを与えられていない状況で、ミドルマネジャーたちはやむなく、みずからも腕まくりをして、チームのメンバーと一緒に現場業務を片づけるはめになることも珍しくない。近年、従業員の退職率が高まっていることも、この傾向に拍車をかけている。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、ミドルマネジャーの中には、マネジメント業務に加えて、週2日相当の時間を現場業務に、週1日相当の時間を事務作業に割いている人もいるという。過剰な業務を抱えているにもかかわらず、与えられている時間やリソースが少なすぎるため、多くのマネジャーが疲弊している。マイクロソフトの調査によると、そのような状況にあるマネジャーたちは、そうでないマネジャーたちに比べて退職する確率が2倍近くに達することがわかっている。

 燃え尽き症候群は、単に疲れたり、ストレスを感じたりするだけでは済まない。そのため、燃え尽き状態から手っ取り早く回復することはできない。時間をかけて、意識的に、そして組織のサポートを受けつつ、言わば平衡感覚を取り戻し、さらには活力とエンゲージメントとモチベーションを再び高めることが必要になる。

 燃え尽きの経験がどのようなものかは、一人ひとり異なり、どのような対応策がどのような効果を生むかも人によって異なる。また、燃え尽きの問題には、魔法の特効薬のような解決策も存在しない。しかし、本稿で紹介する戦略を含む多面的なアプローチを実行すれば、あなたにも部下であるマネジャーたちが燃え尽きから回復する後押しができるだろう。

正しく認識する

 正しく認識するという戦略には、2つの側面がある。一つは、部下が燃え尽き状態にあると認識し、その人物に対して心配する姿勢を見せること。それにより、その人物は、自分が気遣われて理解されていて、さらには大切にされていると感じることができる。加えて、燃え尽きの問題が存在することを認めれば、その問題を俎上に載せて、対処すべき課題として位置づけることにつながる。

 もう一つの側面は、部下であるマネジャーが努力を続けていて、自社の事業に好ましい影響を及ぼし、貢献していると認めることだ。ワークヒューマンとギャラップが1万2000人以上の従業員を対象に実施した調査によると、従業員が評価されることと従業員のウェルビーイングとの間には、強い相関関係があるという。そして、従業員は評価されることにより、自分が会社に貢献していると実感できる。従業員を評価することは、その人物の貢献が目に見えにくい場合にとりわけ大きな意味を持つ。自分が会社に貢献できていると感じている従業員は、無力感を克服し、仕事に対する冷めた感情が弱まり、もっとやりがいを持って仕事に臨めるようになるかもしれない。

「時間を割いてほかの人たちを評価すれば、その人たちに好ましい影響が及ぶだけでなく、評価する側にも好ましい影響が及びます」と、従業員評価と職場文化の専門家であるクリストファー・リトルフィールドは言う。「うまくいっている点に目を向け、進展をほめ称え、部下の貢献に関する情報を広めれば、従業員がやりがいと希望、そして帰属意識を抱く一助になります。これらの要素はすべて、ウェルビーイングを向上させる効果があるとわかっています。具体的には、5分間時間を取って、気持ちのこもったお礼のメッセージを書いたり、手短に称賛の言葉を述べたり、後で振り返って評価を伝えたりするだけでも効果があります」

人と人とのつながりを取り戻す

 マネジャーたちがグループでつながる機会(対面とバーチャルの両方)をつくり出すことにより、燃え尽き状態に陥っている人たちがしばしば経験する孤独感を和らげられる可能性がある。リモートワークを実践している人の間では、孤独にさいなまれる人が特に多い。コミュニティの意識を育んで、マネジャーたちが互いに試練と成功について語り合えるようにすれば、マネジャー同士の助け合いを促せるだけでなく、燃え尽きに伴う孤独感を和らげ、連帯感も生み出せる。

 また、目の前の業務とは関係なく、同僚同士が一対一でつながることも、時に大きな効果を生む。一部の人たちにとっては、グループでのつながり以上に大きな意味を持つ場合もある。「同僚に電話をかけて近況を尋ねるだけでも、あなたがその人のことを気にかけていると伝えることができます」と、職場への帰属意識に関する講演を行っているアダム・スマイリー・ポスウォルスキーは言う。「しばらく言葉を交わしていなかった同僚と連絡を取れば、あなたが彼らにエネルギーとインスピレーションを与えられるかもしれません。特にストレスや燃え尽きで苦しんでいる同僚は、その恩恵に浴せるでしょう」

 ポスウォルスキーは、さらにこう述べている。「ちょっとした親切な行為、たとえば、同僚の誕生日を覚えておいてお祝いを言うとか、同僚が好きなコーヒーをおごってあげるといったことをするだけでも、帰属意識が高まります。職場で人と人のつながりを育むために時間と空間を費やせば費やすほど、私たちの抱くあらゆる感情について話題にしやすくなります。燃え尽きはそうした感情の代表格です。燃え尽きやストレス、孤独について話すことが当たり前になれば、人々の孤独感が和らぎます。孤独感が和らげば、その人の心理状態はかなり改善するでしょう」