業務を再検討し、優先順位を見直し、業務の割り振りを変更する

 マネジャーが燃え尽き状態に陥る大きな原因に、あまりに膨大な量の仕事を課されていることがあるだろう。しかも、新しい優先課題が登場しても、既存のプロジェクトの優先順位が下がることはない。すべての課題が重要業務と位置づけられて、課題リストに留まり続ける。その結果として、マネジャーたちは持続不可能な量の業務を抱えるはめになるのだ。

 一人ひとりのマネジャーがどのような業務を担当していて、どの業務に多くの時間を費やしているのか点検すべきだ。そして、組織としての目標を達成するうえで特に重要な領域を3つリストアップし、その3つの領域にマネジャーの活動を集中させ、それ以外の課題の優先順位を引き下げればよい。どの課題を後回しにできるか、どの締め切りを延長できるか、どの課題を打ち切りにできるかを決めるのである。また、ある成果を上げるためにどれくらいの水準の品質や緻密さが必要とされるのか、成功の度合いを評価するためにどのような指標を採用すべきかを再検討することも重要だ。

 このような再検討の一環として、一人ひとりの業務量と能力を把握し、必要であれば業務の割り振りを見直すことも必要になる。こうした作業を定期的に行い、マネジャーたちが継続的に優先課題を再検討して管理するのを助けることも忘れてはならない。

 1日の時間を24時間以上に増やすことはできないが、リソース(人材、時間、予算)に適合した範囲内に業務量を調整したり、リソースの追加を主張したりすることはできる。たとえば、せめて繁忙期に対処するための一時的な措置でもよいので、新しく人を雇ったり、社外に業務委託したりするための予算を求めてもよいだろう。

チーム内の約束事を見直す

 部下であるマネジャーたちへのエンパワーメントを推し進めることにより、燃え尽きの問題を解消する後押しをしよう。そのためには、メンバーの働き方に関するチーム内の約束事を修正する必要があるかもしれない。チーム内で、どのような形で公私の線引きを尊重するのかを検討すべきだろう。

 たとえば、夜間や週末にメールを送らないようにしたり、そのほかの「マイクロストレス」を生まないように努めたりするといったことに留意する必要がある。新しいルールを形づくり、みんなで前に進むための方法をよりよいものに改善していけば、メンバーの自己効力感が高まるだろう。これは、燃え尽き状態に陥っている人にしばしば欠けている要素だ。

 また、チーム内で、一人ひとりが自分の担当業務に関してどのように責任を持つのか、ほかのメンバーの意見に異論を唱えたり、反論したりすることをどのように認めるのか、どうやって仕事に集中するために会議を行わない日を設定するのかといったことも決めればよい。そのような新しい約束事を決めれば、時間やエネルギーの浪費を少なくし、いら立ちの原因を減らす一方で、メンバーに自分たちがエンパワーメントされているという感覚と、これ以降の自分たちの経験を形づくるうえでの主体性を持たせることができる。

定期的に近況確認を行う

 部下であるマネジャーたちと定期的に一対一で話すように心がけるべきだ。特に、燃え尽きの兆候が見られる人物には、そうした対応が重要になる。そのような機会には、近況を尋ね、どうすればその人物をサポートできるかを確認し、どのような点で行き詰まりを感じているかを尋ねるとよい。そして、業務量が多すぎて手に負えない時は、安心してそう言えるような環境をつくることも必要だ。マネジャーたちが声を上げるようになれば、話し合いを通じて、障害を取り除いたり、業務量を減らしたりするなどして、苦しんでいるマネジャーの負担を軽減する道を探ることが可能になる。

リラックスとリセットを促す

 まとまった休息を取り、緊張をほどくことは、それだけで燃え尽き状態からの回復を果たせるわけではないにしても、心身両面でマネジャーたちがエネルギーを補充し、リセットするためには欠かせないステップだ。また、マネジャーたちが休暇をすべて取得するのが当たり前だという雰囲気をつくる必要もある。膨大な量の業務に忙殺されていると、休暇の取得を先延ばししたり、休暇を取ることを控えたりする人が少なくない。しかし、現実には、処理しなくてはならない課題はけっしてなくならない。たまっている仕事をすべて片づけるまで休暇を先延ばししようとするのは、ゴールラインのないマラソンを走るようなものだ。

 また、休暇の取得を義務化すれば、組織文化に根を張る「戦士のメンタリティ」に対抗できるかもしれない。そのような心理は、燃え尽きを生む原因の一つになっている可能性がある。チーム内で時期をずらして休暇を取って、事業の中断を避けてもよいし、時期を決めて全社で休業し、いっせいに休暇を取れるようにしてもよい。

 どのようなアプローチを実践するにせよ、業務時間外にはメンバーが完全に業務を離れられるようにすべきだ。あなた自身がチーム内でそのお手本を示そう。研究によると、業務時間外に仕事をすると(残念なことに、米国人の3人に2人が業務時間外に仕事をしている)、内発的なモチベーションが弱まるという。燃え尽き状態にある人はそもそも内発的なモチベーションが極めて弱いことを考えると、その弊害はあまりに大きい。

 燃え尽きを解消するためには、目先の対策を取るだけでは十分でない。また、あらゆるチームで有効な方法論が存在しないことも知っておくべきだ。その点、長期にわたって腰を据えて、本稿で紹介した戦略を組み合わせて実践すれば、燃え尽き状態に陥ってしまったマネジャーたちをサポートし、エネルギーを補充できるだけでなく、今後は燃え尽き症候群を寄せつけない状況をつくり出すことができるだろう。


"Managers Are Burned Out. Here's How to Help Them Recharge," HBR.org, August 02, 2023.