休暇の取得による利益を軽視していないか
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サマリー:休暇に関する研究では、有給休暇の未消化問題や燃え尽き症候群(バーンアウト)の増加などが指摘されている。一方、企業にとっても休暇は、従業員のリフレッシュや持続可能性向上に役立つことから、その影響は大きい... もっと見る。本稿では、休暇が人々の心身にどのような影響を及ぼすのかをまとめている。 閉じる

休暇の重要性

 休暇を取るのがよいことは誰もが知っているが、雇用主も従業員も、その理由まで理解しているかどうかは疑わしい。実際、米国の労働者の半数以上は、有給休暇をきちんと消化していない。米旅行協会によると、2018年の未消化の有給休暇は7億6800万日にも上る。このうち30%以上は翌年に繰り越せず消滅する。さらに、管理職の50%以上が燃え尽き症候群(バーンアウト)を感じていることから、休暇を取ること、そして完全に仕事から切り離されることは、かつてなく重要になっている。

 もしかすると、あなたもそう遠くない過去に、休暇を取ることで、エネルギーに満ちて気分がリフレッシュした経験があるかもしれない。あるいは、仕事が忙しくて、あなたもチームも休暇を取ることに躊躇したことがあるかもしれない。

 従業員とあなた自身の持続可能性を高めるためには、定期的に休暇を取るだけでなく、そのメリットを十分に理解して、部下たちに休みを取るよう促すことが重要だ。プールサイドでカクテルを飲みながらのんびり過ごすのであれ、さらにアクティブに過ごすのであれ、あるいはたとえ近場で過ごすステイケーションであれ、休暇を取ることは頭脳と体と魂のプラスになる。

頭脳

 仕事に追われていると、認知疲労や集中力の低下、物忘れ、問題解決能力の低下など、認知機能に影響することがある。休暇を取ると、休息と質の高い睡眠の両方を取れる可能性が高い。

 頭がすっきりすると、思考が明晰になり、創造性が高まる。これは、休暇中の大小さまざまな活動によって実現する。研究によると、散歩をするだけでも(たとえ屋内でトレッドミルを使うだけでも)、創造性が著しく高まることがわかっている。休暇は、大きなアイデアや画期的なアイデアが生まれる機会にもなる。劇作家のリン・マニュエル・ミランダは、大ヒットミュージカル『ハミルトン』の着想を休暇中に得た。「これまでで最高のアイデア──おそらく今後の人生でも最高のアイデアだろう──が、休暇中に浮かんだのは偶然ではない」と、ミランダは語っている。「私の脳が休息を得た瞬間に、ハミルトンのアイデアが浮かんだ」

 休暇を取ったり、休暇の計画を練ったりすると、気分も上がる。特に多くの人は、仕事に関連するストレスや不安から、かなりの「睡眠負債」を抱えている。研究によると睡眠不足は、悲しみや怒り、不満、イライラといったネガティブな気分をもたらし、いちだんと眠れなくなる悪循環をもたらす場合がある。長期的には、睡眠不足は認知症のリスクを高めるおそれもある。

 休暇は睡眠負債を解消、あるいは減らす機会になる。米国心理学会(APA)によると、一晩の睡眠時間が60~90分増えるだけで、記憶力と集中力が増す。休暇を取ると、睡眠パターンをリセットでき、休暇後も気分や認識力を高めることができる。ピッツバーグ大学のマインドボディ・センターの研究では、休暇を取ると気分が明るくなり、鬱が軽くなることもわかった。また、自然の中で時間を過ごすと、ネガティブな反すう思考が軽減し、心理的なウェルビーイングが高まる。

 休暇中に休息を取り、睡眠を改善して仕事に復帰すると、思考が明晰になり、集中力と生産性が高まる。これは本人にも企業にもよいことだ。アーンスト・アンド・ヤングの研究によると、休暇が10時間増えるごとに、その従業員の年末の成績は8%向上する。別の調査では、有給休暇をすべて消化する人ほど、昇進・昇給の可能性が高い。また、休暇を頻繁に取得する人は、会社を辞める可能性が低い。

 休暇の取得を義務化した別の企業の実験では、明らかに、創造性や幸福感、生産性の向上が見られたという。全員が一定の間隔で休暇を取ることが義務づけられていたため、休暇を取らないことで自分の頑張りをアピールするような、戦士か殉教者のようなメンタリティーにも対抗できた。